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米国の民間長期介護保険の動向について-年金・長期介護保険セット商品の導入を中心として

小松原 章
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■目次
1――介護ニーズ高まる高齢化社会の進行と民間長期介護保険の動向
2――年金保護法成立と税制改正
3――期待高まる年金・介護セット商品の概要
4――長期介護保険を巡る最新の動き
■introduction
わが国同様米国においても程度の差はあるものの着実に高齢化社会が進行しており、下表のとおり、65歳以上の人口比率は2010年で13%(日本23.1%)と1980年に比し、約2ポイントの上昇となっている。この傾向は今後も着実に高まり、2050年には21.6%へと上昇するものと見込まれている。
このような情勢の下、わが国のような社会保険としての公的介護保険制度が存在しない米国では、増大すると見込まれる長期介護費用に充当すべき財源確保の主要手段として、民間保険会社の長期介護保険に対する期待が高まっている。
ところで、ここでいう民間長期介護保険の一般的仕組みは、他人の補助がないと日常生活上の行為(activities of daily livings、ADL)ができない契約者または深刻な認識障害(severe cognitive impairment)にある契約者に与えられる介護サービスに対して給付金が支払われる保険契約である。この場合の日常生活上の行為とは、食事、排泄(toileting)、移動、入浴、着替えおよび排泄抑制(continence)であり、最低2行為以上該当が給付の条件である。さらに、深刻な認識障害とは、その者の健康・安全確保のために相当の監督を要する状態であり、いわゆるアルツハイマー病、認知症等が対応する。
そこで、民間の長期介護保険市場の現状を米国生保協会(ACLI)のデータ(ファクト・ブック)で見ると、2009年の長期介護保険の収入保険料は、105億ドルであり、生保会社の収入保険料合計額の5,223億ドルの2%程度にとどまっており、市場的にはいまだ発展途上の段階にある。
次に長期介護保険の内訳を代表的な生保リサーチ機関であるリムラ(LIMRA)のデータで見ると、2009年の収入保険料ベースで個人契約82%、団体契約18%となっている。主力の個人長期介護保険の業績(新契約保険料)を同じくリムラの統計で見ると、1990年代は年平均14%程度で伸びたのに対して、2000年代に入ると鈍化の兆しが現れ、年平均マイナス7%程度と低迷している。
さらに長期介護保険は税制優遇の有無の観点から税制適格・非適格に分けることができる。税制適格に該当すると、払い込み保険料に対して所得控除が適用されることがある上に、長期介護給付金が非課税扱いされるなどの特典がある。個人長期介護保険について見るとほぼすべて(99.4%)が税制適格型である。
以上のように米国の民間長期介護保険市場は、税制適格型の個人契約で構成されていると見ることができる。
しかし、上記で紹介したとおり、民間介護保険市場が特に2000年代に入り低迷しており、高齢化を控えての潜在ニーズに対応しているとは言いがたい状況にある。
(2011年03月22日「ジェロントロジーレポート」)
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