- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 雇用関連統計10年12月~失業率は10ヵ月ぶりに5%を下回る
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■見出し
・失業率は前月から0.2ポイント改善の4.9%
・有効求人倍率は前月と変わらず
■introduction
総務省が1月28日に公表した労働力調査によると、10年12月の完全失業率は前月から0.2ポイント低下し4.9%となった(共同通信集計・事前予想:5.1%、当社予想も5.1%)。
雇用者数が前年比0.2%(11月:同0.3%)と4ヵ月連続し、自営業主・家族従業者の減少幅が縮小したため、就業者数は前年比0.1%(11月:同▲0.1%)と2ヵ月ぶりに増加した。失業者数は298万人(前年比19万人の減少)となり、7ヵ月連続で前年の水準を下回った。
失業者の内訳を求職理由別に見ると、非自発的な離職による者が前年に比べ23万人の減少(うち勤め先都合が23万人減)となる一方、自己都合による者が3万人の増加となっている。雇用情勢は依然として厳しいが、失業の中身を見ると深刻度は若干緩和されていることがうかがえる。
雇用者数の内訳を産業別に見ると、製造業の雇用者数は前年に比べ▲29万人減となり12月の▲12万人減から減少幅が拡大した。鉱工業生産はここにきて持ち直しつつあるが、夏場以降の低迷の影響がここにきて顕在化しているものと考えられる。また、公共工事削減の影響などから建設業が前年に比べ▲21万人減と11ヵ月連続で減少した。一方、卸売・小売業(24万人増)、教育、学習支援業(16万人増)などは比較的堅調な動きとなっている。
(失業率高止まりには雇用対策の効果剥落の影響も)
失業率は10ヵ月ぶりに5%を下回ったが、均してみれば5%前後の高水準で一進一退の動きが続いている。このように、景気が回復局面入りしてから1年半以上が経過しているにもかかわらず、失業率が高止まりしている背景としては、雇用対策の効果が剥落してきたことが考えられる。
雇用対策の一環として導入された雇用調整助成金の支給要件緩和により急増した同制度の申請数は、ピーク時の09年4月には253万人となったが、10年12月には99.7人と100万人を割り込む水準にまで減少した。このこと自体は09年春以降の景気回復を反映した明るい動きとも捉えられるが、生産、売上などの持ち直しにより雇用調整助成金の申請に必要な要件を満たさない企業が増えたことで、それまで企業内にとどまっていた潜在的な失業者の一部が顕在化していることも考えられる。同制度の利用によって企業が余剰人員を抱えているため、景気が回復しても新規採用に踏み切りにくくなっているといったこともあるだろう。
雇用調整助成金の拡充によって、リーマン・ショック以降の失業率の急上昇を抑制してきたことは確かだが、その副作用として対策の効果剥落が雇用の本格回復を妨げる一因になっている可能性がある。
(2011年01月28日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
斎藤 太郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/06/20 | 消費者物価(全国25年5月)-コアCPIは食料中心に上昇率拡大も、夏場には3%割れへ | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/06/18 | トランプ関税による企業収益への影響~輸出数量減少よりも輸出価格引き下げのほうが悪化幅は大きい~ | 斎藤 太郎 | 研究員の眼 |
2025/06/18 | 貿易統計25年5月-米国向け自動車輸出が価格低下を主因として大幅減少 | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/06/09 | 2025・2026年度経済見通し-25年1-3月期GDP2次速報後改定 | 斎藤 太郎 | Weekly エコノミスト・レター |
新着記事
-
2025年06月20日
トランプ関税をオプションで考える-影響と対応のヒントを探る -
2025年06月20日
英国金融政策(6月MPC公表)-金利据え置きで従来の利下げペースを維持 -
2025年06月20日
保険会社の人工知能(AI)ガバナンスに向けた意見(欧州)-欧州保険協会の回答書より -
2025年06月20日
消費者物価(全国25年5月)-コアCPIは食料中心に上昇率拡大も、夏場には3%割れへ -
2025年06月19日
緊迫化する中東情勢、ドル円への影響は?~マーケット・カルテ7月号
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
【雇用関連統計10年12月~失業率は10ヵ月ぶりに5%を下回る】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
雇用関連統計10年12月~失業率は10ヵ月ぶりに5%を下回るのレポート Topへ