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持続可能な高齢化社会のために-人的資産投資としての子供とその果実としての介護-
遅澤 秀一
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■目次
1――はじめに
2――社会保障財源としての子供
3――子育て支援策の有効性
4――消費としての介護と人的資本投資の果実としての介護
5――高齢化社会における人的資産ヘッジとしての資産運用
6――おわりに
■introduction
高齢化社会の進展で現役時代から貯蓄や投資によって高齢期に備えることが必要になってきた。また、日本では高齢者に金融資産保有が偏っていることもあり、高齢者の資産運用にも資産運用業界を中心に関心が集まっている。しかし、そのような個人ベースの対応とは別に日本には社会保障制度があり、高齢者の生活を実際に支えているのは公的年金、医療保険や介護保険制度なのである。日本の社会保障制度は実質的に賦課方式なので、現役世代から高齢世代に対して言わば仕送りをしているわけだが、現役世代の貯蓄・投資を考える上で、このような所得移転の影響も考える必要があるだろう。また、賦課方式ということは、生産年齢人口が減少すると制度の持続性が危ぶまれる状況に陥る可能性もあるということだ。つまり、現役世代には高齢者を支えると同時に、次代を担う子供を養育する役割がある。ところが、賦課方式の社会保障制度と少子化との関係は、前述の関係だけでなく、逆ルートもありうる。つまり、賦課方式の社会保障制度が少子化の一因となっている可能性である。この点は経済学者も議論の対象にしているが、それほど一般的ではない。
本稿では、少子化によって賦課方式の社会保障制度の持続性に問題が出るのとは逆に、賦課方式の社会保障制度が少子化の一因になっていることを第2章で確認した上で、その対策としての子育て支援策の有効性と限界や問題点について第3章で論じる。さらに第4章で、労働集約的な介護の特殊性を考慮して少子化対策とリンクさせる対策を検討する。また、介護を通して子育てに人的資本投資の側面を持たせる場合の現役時代における資産運用への影響について第5章で簡単に考察する。
(2011年01月25日「ジェロントロジーレポート」)
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