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人的資本投資としてのベーシック・インカムの可能性について
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遅澤 秀一
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最近、すべての個人に対して無条件かつ定期的に所得を給付するベーシック・インカム(基本所得)が注目を集めている。日本ではシビル・ミニマムを保障する政策として生活保護等がある。しかし日本の制度は受給者に対しては比較的手厚いが、受給者の範囲が狭く貧困家庭の捕捉漏れがあるとの批判がかねてよりあった。雇用形態の変化やワーキング・プア問題が顕在化し、従来の制度の綻びが目立つようになってきたことが、ベーシック・インカムが注目されている背景にある。
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ベーシック・インカムの歴史は長いため、政治思想的側面だけでなく制度論としても議論されてきた。従来からある批判の主だったものは、「働かざるもの食うべからず」「何もしないでも金がもらえるのならば誰も働かなくなる」「なぜ金持ちにまで支給するのか」「莫大な財源が必要で非現実的だ」といった根源的なものが多い。しかし、このような基本的問題に関しては議論されてきたものの、政治的立場が異なる人達を完全に納得させるには至っていない。
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本稿では、従来の議論では副次的効果とされてきた生き方や働き方の多様化を前面に出し、低所得層への生活支援を反射的効果とすることによって、人的資本投資の観点からベーシック・インカムの再構築を行い、イデオロギー色を薄めることを試みた。さらに、ベーシック・インカムの難点と言える財源問題についても、人的資本投資としての位置付けと整合性を保ちつつ、定率所得税と死亡時一括払い世代別人頭税の併用によって、非現実的と批判を浴びがちだった従来の議論に見られた高率の所得税率や消費税率を回避できる可能性を示唆した。
(2010年11月11日「基礎研Research Paper」)
遅澤 秀一
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