2010年09月03日

法人企業統計10年4-6月期~設備投資の持ち直しが明確に、4-6月期の成長率は上方修正へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・2四半期連続の増収増益
・設備投資の持ち直しが明確に
・4-6月期・GDP2次速報は上方修正を予測

■introduction

財務省が9月3日に公表した法人企業統計によると、10年 4-6月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比83.4%(10年1-3月期:同163.8%)と3四半期連続の増加となった。
輸出の回復などを背景に売上高が前年比20.3%と1-3月期の同10.6%から伸びを大きく高めたことが経常利益の高い伸びにつながった。増収増益は2四半期連続である。ただし、人件費などの固定費は前年比▲0.0%(1-3月期:同▲0.1%)とほぼ横ばいとなったが、既往の原油価格上昇の影響などから変動費の増加幅が大きく拡大したため(1-3月期:前年比10.2%→4-6月期:同22.8%)、増益率は1-3月期からは大きく低下した。製造業が前年比553.0%(1-3月期は黒字転化)、非製造業が前年比33.1%(1-3月期:同5.2%)であった。
季節調整済の経常利益は前期比2.3%となった。5四半期連続の増加だが、09年10-12月期が前期比35.1%、10年1-3月期が同5.3%となっており、伸び率は鈍化傾向が続いている。製造業はコスト増が響き前期比▲22.0%となり、季節調整値で見れば5四半期ぶりの減益となった。一方、非製造業は前期比21.5%と2四半期ぶりに増加した(1-3月期:同▲11.5%)。経常利益はリーマン・ショック後の急速な落ち込みから前年の水準が極めて低かったため、前年比では引き続き高い伸びとなっているが、基調としてはすでに回復ペースが緩やかになっている。
売上高経常利益率は全産業ベースで3.7%となり、前年よりも1.3ポイント改善したが1-3月期(前年差1.9ポイント)に比べれば改善幅は縮小した。製造業が前年差3.6ポイント(1-3月期は同7.1ポイント)、非製造業が前年差0.4ポイント(1-3月期は同▲0.1ポイント)となった。製造業、非製造業ともに売上の伸びが高まる中でも人件費の抑制傾向が続いているため、売上高人件費率は大きく改善したが、変動費の大幅な増加が、利益率の押し下げ要因となった。
4-6月期は製造業、非製造業ともに売上の増加が収益の回復をもたらす一方、コスト増が収益の圧迫要因となった。しかし、足もとではすでに状況が大きく変化している。7-9月期以降はコスト面では原油をはじめとした国際商品市況の下落や円高の進展が収益にプラスに働く一方、海外経済の減速を背景とした輸出の伸び悩みから売上の伸びは製造業を中心に低下することが見込まれる。企業収益の回復基調は先行きも持続することが見込まれるが、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高いだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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