2010年07月26日

コミュニティビジネスへの期待

常務取締役理事 神座 保彦

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地域の抱える社会的な課題を解決するためのソリューションとしてコミュニティビジネスが注目されるようになってきた。
昨今、営利企業であっても純粋に利益極大化だけに邁進すれば良いと言う訳ではなく、良き企業市民として人類、社会や地球環境への配慮がなされることが経営場面で要請されており、万一、社会を欺くような行為があれば事業の継続そのものが難しくなる時代となった。
他方、社会貢献を目的に作られた組織がビジネスを営み、組織自身の維持や社会貢献のためのキャッシュは自らが生み出す、あるいは、ビジネスのプロセスそのものを通じて社会貢献に取り組むといった例も出てきている。このような組織を、近年では、ソーシャルベンチャーあるいはソーシャルビジネスと呼ぶことが広まっているが、さしづめコミュニティビジネスはこれら組織の「地域限定版」と言って差し支えなかろう。
コミュニティビジネスは、地域の抱える課題に対してビジネスを通じて解決策を見出そうとするものである。実例を見ると、期待される成果は、いわゆる村興し・町興しといった地元経済の活性化に関連するものが多いようだ。地域に根ざした特産品を作り、それをビジネスに仕立てることで、地域に雇用機会を生み出し、参加者は金銭収入と働く喜びを分かち合うといった構図が見えてくる。高級料理には付き物のツマモノを供給する徳島県上勝町の「(株)いろどり」が「葉っぱビジネス」成功例として有名だが、こちらは、有名ビジネススクールのケーススタディの教材にまでなっている。
ところで、コミュニティビジネスは、地方での威力発揮が期待されているだけではない。都市部での期待も大きい。ただ、都市部の場合は、その狙いが地元経済の活性化にあるというよりは、むしろ、ビジネスを通じた商品・サービス提供そのものや、そのプロセスを通じた地域コミュニティの醸成といったところに期待されている部分が大きいようだ。例えば、少子高齢化の進展で住民の数が減ったため団地の敷地内にあった商店が撤退してしまい、不便な生活を余儀なくされている団地居住の高齢者向けの配食サービスをコミュニティビジネスの形で実現するといったことが典型例である。
コミュニティビジネスでは、営利企業であれば低採算のためとても参入できない市場環境下でのビジネス展開が必要な例も出てくる。人件費節減のため、地元住民による有償ボランティアの助けを借りることも多いが、この構図では、コミュニティビジネスは、地域における社会的な課題を解決しつつ、同時に、地元住民の社会貢献活動参加を促進する役割を果たすこととなる。ただし、理想を言えば、有償ボランティアの低賃金労働に依存した経営ではなく、営利企業並みの賃金支払いを前提にコミュニティビジネスを成り立たせうるイノベーションの創出を是非とも期待したいところではある。

(2010年07月26日「基礎研マンスリー」)

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常務取締役理事

神座 保彦 (じんざ やすひこ)

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