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■introduction
インドの中央統計機構(CSO)が5月31日に発表したプレスリリース資料によると、今年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比8.6%増、2009-10年度(2009年4月-2010年3月期)は7.4%増となった。
図表-2に示した産業別の実質成長率を見ると、2007年まで10%近い実質成長を遂げていたインド経済は、2008年に入ると世界的な金融危機の影響を受けて減速基調に転じ、工業の厳しい減速で2009年1-3月期の前年同期比5.8%増がボトムとなった。その後、農林漁業は低迷を続けたが、工業や商業・ホテル・交通通信が順調に回復する中で、この1-3月期には工業が前年同期比16.3%増、商業・ホテル・交通通信が同12.4%増と牽引役を果たし、インド経済は回復基調となっている。
また、公表された名目GDPの需要項目別占率を見ると、財政出動で高止まりしていた政府支出の比率が減少し、低迷していた総固定資本形成の比率が増加している。公表数値を元に名目GDP成長率の需要別寄与度を計算して見たのが図表-3である。2007年末まで10%近い実質成長を遂げて
いた時期には、個人消費と総固定資本形成がバランス良く車の両輪のように作用し、インド経済は内需主導の成長を実現していた。しかし、2008年秋のリーマンショック後、個人消費は比較的堅調を維持したものの、総固定資本形成が急減速し、代わって政府支出が景気を下支えした。その結果、インド経済は財政赤字が膨らみ、財政頼みの色彩を強めていた。今回発表の今年1-3月期の数値を見ると、個人消費はやや低位だが、政府支出の寄与は減り、総固定資本形成の寄与が大幅に増加しており、インド経済は財政頼みからの脱却が進みつつあると言える。
他方、懸念材料は財政危機に揺れる欧州問題とインフレの2つだろう。インドは欧州への輸出割合が約2割と大きいため、欧州で財政再建が急激に進み景気が失速すれば輸出への悪影響は免れない。しかし、インドの輸出依存度は主要新興国の中でも低位で、その他の指標を見てもショックへの耐久力は高いと考えられる(図表-4)。一方、図表-5を見るとインドの卸売物価は昨年末から上昇傾向を強めており、2月には前年同月比10%を超えインフレ懸念が台頭した。これを受けてインド準備銀行は現金準備率の引上げとレポ金利(政策金利)の引上げで金融引締めを強化している。
インドのシン政権が目指す中期的に年率10%の成長目標(2010-11年度の見通しは8.5%)に向けて、インフレを抑制しつつ順調に回復してきたインド経済を成長軌道に乗せられるか否かは、今後の財政・金融の「出口戦略」の巧拙にかかっていると言えるだろう。
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