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コラム
2010年03月17日
資産運用の巧拙を評価しようとした場合、様々な評価軸が考えられる。最も重視される指標として、まず「超過収益」が挙げられる。超過収益とは、あらかじめ基準となる運用指標(株式であればTOPIX、債券であればNOMURA-BPI、等)を設定しておき、それをどれだけ上回ったか、を評価するものである。超過収益が高ければ高い程、その運用は良い運用であったと評価される。ところが、これには落とし穴が1つある。基準となる運用指標そのものが大きく下落した場合、例え超過収益が良くても、損失を被る可能性があるということだ。
運用の基準となる指標をベンチマークというが、これはマーケット全体の平均値とすることが多い。そのため、マーケット全体が大きく下落した場合、損失を被ることになる。超過収益が高ければ、その損失は多少緩和されるが、マーケット全体の下落幅が大きい場合、とても吸収できる範囲ではなくなる。ここで、お金を預かり運用をする側(以下、「運用者」)の立場からすると、マーケット全体が下落し、みんなが損をしているのだから、自分の運用は悪くなかった。むしろ超過収益はプラスで、みんなより損失の幅が小さかったのだから、自分の運用は高く評価されるべきだ、と考えるだろう。ところが、実際にお金を預け運用をしてもらっている側(以下、「顧客」)の立場からすると、マーケットが下落する中、超過収益はプラスで確かに運用者は頑張ってくれたけれども、やはり損はしたくないというのが本音ではないだろうか。
もう1つの評価軸として、「絶対収益」がある。絶対収益とは、ベンチマークといった基準となる運用指標を特に設定せず、とにかく高い収益を上げれば、良い運用であったと評価するものである。これは、顧客からすると、預けたお金がいくら増えたのかが、そのまま評価対象となるため、評価軸としては分かりやすい。ところが、これにも落とし穴が1つある。マーケット全体が大きく上昇し、みんなが大もうけしたにもかかわらず、自分の資産だけそんなに大きく増えなかったとしたらどうだろうか。運用者は、絶対収益がプラスで、収益を上げたのだから、自分は評価されるべきだと考えるだろう。ところが顧客は、確かに自分の資産を増やしてくれたけれども、マーケットがこんなに大きく上昇して、みんなもっと稼いだのだから、自分の分も、もっと増やして欲しかった、と思うのではないだろうか。
更にもう1つ「トラッキング・エラー」という評価軸がある。これは、ベンチマークとの乖離幅(=超過収益のブレ)が少ないことを評価するものである。インデックス運用のように、ベンチマークと同じ運用を目指す場合、乖離幅が小さいことが良いこととされる。しかし、これにも落し穴がある。超過収益がプラスの時でも、プラス幅が小さい方が高く評価されるのである。顧客からすると、マイナスの時は小さく抑えてくれて良かったけれど、プラスはやはり大きい方が良いというのが、本音ではないだろうか。
運用者は、このように運用の評価軸となっている数値を良くしても、落し穴があり、顧客を本音で満足させることができないことがある。よって、運用の評価軸については、落し穴も考慮した上で、運用開始時に顧客と合意しておく必要がある。顧客も、運用の評価軸となっている数値の良いことが、自分の要求するものと一致しているかどうか、十分に吟味しておく必要がある。結果次第で運用の評価軸が変わるようでは、本来の運用目的を見失い、リスクを拡大させかねないだろう。
運用の基準となる指標をベンチマークというが、これはマーケット全体の平均値とすることが多い。そのため、マーケット全体が大きく下落した場合、損失を被ることになる。超過収益が高ければ、その損失は多少緩和されるが、マーケット全体の下落幅が大きい場合、とても吸収できる範囲ではなくなる。ここで、お金を預かり運用をする側(以下、「運用者」)の立場からすると、マーケット全体が下落し、みんなが損をしているのだから、自分の運用は悪くなかった。むしろ超過収益はプラスで、みんなより損失の幅が小さかったのだから、自分の運用は高く評価されるべきだ、と考えるだろう。ところが、実際にお金を預け運用をしてもらっている側(以下、「顧客」)の立場からすると、マーケットが下落する中、超過収益はプラスで確かに運用者は頑張ってくれたけれども、やはり損はしたくないというのが本音ではないだろうか。
もう1つの評価軸として、「絶対収益」がある。絶対収益とは、ベンチマークといった基準となる運用指標を特に設定せず、とにかく高い収益を上げれば、良い運用であったと評価するものである。これは、顧客からすると、預けたお金がいくら増えたのかが、そのまま評価対象となるため、評価軸としては分かりやすい。ところが、これにも落とし穴が1つある。マーケット全体が大きく上昇し、みんなが大もうけしたにもかかわらず、自分の資産だけそんなに大きく増えなかったとしたらどうだろうか。運用者は、絶対収益がプラスで、収益を上げたのだから、自分は評価されるべきだと考えるだろう。ところが顧客は、確かに自分の資産を増やしてくれたけれども、マーケットがこんなに大きく上昇して、みんなもっと稼いだのだから、自分の分も、もっと増やして欲しかった、と思うのではないだろうか。
更にもう1つ「トラッキング・エラー」という評価軸がある。これは、ベンチマークとの乖離幅(=超過収益のブレ)が少ないことを評価するものである。インデックス運用のように、ベンチマークと同じ運用を目指す場合、乖離幅が小さいことが良いこととされる。しかし、これにも落し穴がある。超過収益がプラスの時でも、プラス幅が小さい方が高く評価されるのである。顧客からすると、マイナスの時は小さく抑えてくれて良かったけれど、プラスはやはり大きい方が良いというのが、本音ではないだろうか。
運用者は、このように運用の評価軸となっている数値を良くしても、落し穴があり、顧客を本音で満足させることができないことがある。よって、運用の評価軸については、落し穴も考慮した上で、運用開始時に顧客と合意しておく必要がある。顧客も、運用の評価軸となっている数値の良いことが、自分の要求するものと一致しているかどうか、十分に吟味しておく必要がある。結果次第で運用の評価軸が変わるようでは、本来の運用目的を見失い、リスクを拡大させかねないだろう。
(2010年03月17日「研究員の眼」)
千田 英明
千田 英明のレポート
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