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CSR(企業の社会的責任:Corporate Social Responsibility)は、サブプライム問題勃発以降の企業業績の急悪化の中で、企業側の取り組み姿勢が試される局面に入ってきている。すなわち、企業収益からすれば「背に腹は替えられない」状況下でCSRをどう捉えるかという問題に直面している。
数年来、企業が自社のゴーイングコンサーン性を確保しようとする場合には、高い収益とともに、企業経営の場面での「良き市民」としての振る舞いも不可欠であるという認識が広く浸透してきた。また、実際、サブプライム問題勃発以前の時期には、収益に余裕もあり、企業は多くの経営資源をCSRに投入してきた。
この時期、巷には「CSR戦略」という言葉が溢れ、企業がステークホルダーに向かって「CSR重視の経営を行っています」と言いたいがためのような社会貢献活動も散見された。
他方、株式投資の世界では、企業を評価する視点として、企業の産み出した金銭的成果だけでなく、人類社会や地球環境への貢献成果に代表される非金銭的な成果にも注目する流れが出ている。これがSRI(社会的責任投資:Socially responsible investment)である。
SRIは、人類社会や地球環境に好ましくない活動をする企業の株を投資対象から外すという立場から、社会貢献を積極的に行う企業に対して選択的に投資を行う立場まで様々である。
企業からすれば、このSRI投資家から投資対象として選ばれることが自社の株価に好影響を及ぼす期待から、企業価値(=株価の時価総額)を維持するためには効果的な「CSR戦略」が必要との判断につながる。
ここでの「CSR戦略」を見ると、その動機付けは「より良い社会貢献成果を生み出すこと」そのものを追求するに止まらず、その先に期待される「社会貢献を通じた自社の企業価値拡大」の追求にも大きく比重が置かれている。
他方、最近の企業業績悪化のなかで、社会貢献目的の非営利組織などからは、企業からの資金提供が先細りになりそうという懸念の声が聞こえてきている。
ところで、CSRとは、そのために特に資金を投入すべきものであろうか。景気の変動で極端な影響を受けるのが当然のものであろうか。
企業の社会的責任をどのように果たすかという原点に立ち返ると、CSRとは、投下資金の多寡とは別に、常日頃、企業内のあらゆる階層で行われている全ての意思決定の場面で、人類社会への貢献や地球環境への配慮といった要素がどれだけ重要視されているかということで決まるのではないだろうか。CSRが経営における価値判断基準であるならば、業績変動とは切り離された存在として位置付けられないか。
(2009年07月24日「基礎研マンスリー」)
常務取締役理事
神座 保彦 (じんざ やすひこ)
研究・専門分野
ソーシャルベンチャー、ソーシャルアントレプレナー
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