コラム
2009年05月12日

新型インフルエンザと感染症予防法・検疫法

小林 雅史

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5月11日現在、新型インフルエンザはメキシコや米国など世界31カ国・地域で4000人を越える感染者が発生し、日本においても海外から帰国した4人の感染が確認された。

新型インフルエンザへの対応は、1998年に制定された感染症予防法(正式名称は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」)の2008年改正で、感染症として「新型インフルエンザ等感染症」が追加され、同時に検疫法が改正されたことにより強化された。

感染症予防法は、感染症を一類感染症(エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルク病、ラッサ熱)、二類感染症(急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、SARS、血清亜型H5N1の鳥インフルエンザ)、三類感染症(コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス)、四類感染症(E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病、血清亜型H5N1を除く鳥インフルエンザ等)、五類感染症(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除くインフルエンザ、E型・A型を除くウイルス性肝炎、AIDS、梅毒、麻しん等)、新型インフルエンザ等感染症(新型インフルエンザまたはかって世界的規模で流行した再興型インフルエンザで、一般に国民が免疫を獲得していないことから、全国的かつ急速なまん延により国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの)に分類し、一類感染症・二類感染症・三類感染症・新型インフルエンザ等感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由がある者についての健康診断、患者又は無症状病原体保有者についての就業制限が義務付けられ、また、一類感染症・二類感染症・新型インフルエンザ等感染症の患者については、入院が義務付けられる。

新型インフルエンザ等感染症については、このほか、まん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由がある者に対する潜伏期間を考慮して定めた期間内の体温その他の健康状態の報告・外出制限への協力も求められている。

さらに、2008年改正の検疫法では、新型インフルエンザ等感染症は、一類感染症とほぼ同様の措置がとられ、患者の隔離、感染症の病原体に感染したおそれがある者についての医療機関・宿泊施設・船舶への停留、感染したおそれがある者で停留されなかった者への健康監視等が定められ、違反した場合は、懲役又は罰金といった罰則の対象となる。

厚生労働省は、4月28日に、新型インフルエンザについて、同日WHOでパンデミック警報レベルがフェーズ4に引き上げられたことを受け、感染症予防法に定める新型インフルエンザ等感染症に位置づけた。

今後、本年2月に改定された「新型インフルエンザ対策行動計画」に基づき対応が行われていくこととなるが、現在は「新型インフルエンザ対策行動計画」による「海外発生期」であり、今後の「国内発生早期」に向けた準備を進めることが急務とされている。具体的には、ウイルスの国内侵入の阻止に向けた上記の隔離・停留・健康監視の徹底、サーベイランス体制の強化、医療体制の整備、抗インフルエンザウイルス薬の確保等である。

なお、生命保険においては、新型インフルエンザによる入院については、一般に疾病入院として保障の対象となり、万一死亡した場合については、一般に普通死亡として保障の対象となる(感染症予防法の一類感染症・二類感染症・三類感染症の一部については、災害死亡として保障の対象となる)。

今後の動向は予断を許さないが、引き続き注視していきたい。
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