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- 低炭素経済における「炭素債務」の考察 -炭素債務を考慮した自己資本利益率(C-ROE)の試み-
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日本でも「環境債務会計」が2010年度から導入される。企業会計において「環境債務」を明示することが義務化されたのである。土壌汚染が判明した場合、将来の浄化処理や原状回復の費用を現在価値に換算し、減価償却費として企業会計への記載が必要である。将来のある時点で確実に有害物質の処理費用が発生するのであれば、それは間違いなく財務会計上の“隠れ負債”となる。
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環境債務には土壌汚染のような「資産除去債務」だけでなく、CO2に代表される温室効果ガス(GHG)による地球規模での気候変動による影響も含まれるのである。これは「炭素債務」と呼ばれる。
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企業の工場やオフィスなどでのオペレーション段階におけるCO2排出量について「見える化」の要求とともに、算定や報告の制度化が進んでいる。日本でも2006年度分から一定規模以上の排出量のある事業所は国に報告しなければならない。「温室効果ガス算定・報告・公表制度」である。
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データ制約はあるものの、企業別に公表されたCO2に代表される温室効果ガスの排出量を用いて、粗い前提をおいて、炭素債務を考慮した自己資本利益率(C-ROE)を新たに定義して計算を試みた。
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C-ROEの試算では企業単独の事業所をバウンダリーとしたが、温暖化規制が進むと素材型製造業に多いエネルギー多消費型の産業は炭素債務(削減費用)がROEを押し下げる。組立型製造業や非製造業では大きな影響は受けない。
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しかし、企業の温暖化リスク対応では工場オペレーションだけでなく、製品や商品の使用・利用段階での排出量削減が不可欠であることから、ライフサイクルでのカーボン・マネジメントが必要である。投資家も炭素債務への対応という新しい視点から企業を評価するようになろう。
(2009年03月25日「ニッセイ基礎研所報」)
川村 雅彦
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