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2006年4月、東証マザーズに上場していたライブドアは上場廃止となった。2004年9月期決算の有価証券報告書に虚偽記載があったためである。この結果、ライブドアの株価は急落し、2005年5月にライブドアの第三者割当増資を引き受けたフジテレビジョンは343億円の損失を被った。
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この一連のライブドア事件は株式市場の参加者に対してさまざまな分析の視点を与えてくれる。それらの素材のうち、本稿では、開示情報の意義を扱い、またライブドアの企業価値と株式価値を試算することで、情報分析の重要性を示す。
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日本の金融商品取引法に基づいて確立している情報開示制度は、経済活動を円滑化するための社会的なインフラストラクチャーである。この制度は証券に関する上場制度を有している世界各国に共通のものである。情報開示制度が確立しているから、投資家は適切な企業の情報を容易に得ることができる。一方、資金調達者である企業も安価なコストで、かつ円滑に資金調達することが可能となる。ライブドアは情報開示制度に違反して虚偽の情報を提供し、それに基づいて投資家に株価形成と資金供給を行わせた。これにより、社会的に重要なインフラストラクチャーとしての情報開示制度を揺るがせた。
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2004年9月期決算に虚偽記載がなければ、当該期にライブドアが生み出したフリーキャッシュフローは、きわめて小さなものでしかなかった。また、成長率に対する期待を縮小する効果や、ライブドア株のリスクプレミアムを高める効果をもたらしただろう。この結果、投資家が推定するライブドアの企業価値と株式価値は大きく低下したはずである。一方、ライブドアとすれば、虚偽記載を行うことで、高株価を形成、維持することで、事業拡大のための巨額の資金を公募増資によって調達することが可能となった。
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実際、虚偽記載がなかった場合のライブドアの株価を試算してみると、その価値は当時の株主資本の総額に満たないものであった。ライブドアの事業が、全体として、資本コストに見合った利益を生み出していなかったのである。
(2009年03月25日「ニッセイ基礎研所報」)
京都大学経営管理大学院
川北 英隆
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