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■要旨
1.CSR(企業の社会的責任)の概念自体は新しいものではない。実は、日本には50年の歴史がある。1990年代後半から日本企業に「環境経営」が定着するなかで、2000年以降に頻発する企業不祥事を契機に、再びCSRへの関心が高まったのである。そして、2003年に「CSR経営元年」を迎えた。
2.日本では戦後ほぼ 10年周期で大きな企業不祥事や企業批判が起こり、そのたびにCSR論議が再燃し、企業が反省・自戒するパターンを繰り返してきた。時代情況に応じてその内容が異なるため、戦後復興期を経た1956年の経済同友会のCSR決議を起点としてCSRの時代区分を5期に分けることができる。
3.CSR論議が大きな“うねり”となって湧き上がる時は、社会の企業に対する価値観が大きく転換する時と一致する。日本では1970年代と2000年代に顕著に現れている。いずれも企業不祥事に代表される企業体質のネガティブな側面が、市場や社会から厳しい批判を受けたことが直接の契機となっている。
4.CSRとは、企業が本業を通じて社会的課題を解決し、社会の持続可能な発展を図るとともに、企業価値の創造や競争力向上に結び付けるべき企業戦略である。その意味で、企業活動の経済的・環境的・社会的側面は密接不可分のものであり、CSRは本業とは別の特殊な取組ではなく、本業のプロセスとプロダクトにおいて実践すべきものである。
5.CSRの実践すべき内容を曖昧にしないためには、まず解決すべき社会的課題は何かを明らかにしておく必要がある。その上で、CSRの実践領域は、「基盤的CSR」と「創造的CSR」に分けられる。
6.これまでCSRの「取組」が問われてきたため、「成果」が出ていなくても体制や取組内容が良ければ、“CSRに優れた企業”と評価されてきた。それゆえ、“名ばかりCSR経営”も散見される。しかし、これからは具体的な「成果」が問われる。さらに現下の世界同時不況にあっては、企業のCSRの“本気度”が試されることにもなろう。
(2009年02月25日「ニッセイ景況アンケート」)
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