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- 5月BOE金融政策委員会~25bpの利上げを決定
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■見出し
・インフレ・リスクに対応し25bpの利上げを決定
・注目される価格設定行動と雇用・所得環境の変化
■introduction
イングランド銀行(以下、BOE)は、5月9日、10日に開催された金融政策委員会(以下、MPC)で25bpの利上げを決定した。2006年8月の再開から4度目の利上げで政策金利は5.5%となり、2006年8月の利上げ休止後、政策金利を据え置いている米国を上回った。
前回のMPCでは、据え置き票7、利上げ票2と票差が開いていたが、今回の利上げは4月中旬以降明らかになった材料が、(1)トレンドを上回る成長の持続、(2)インフレ率の上振れ、(3)貸出、マネー・サプライの高い伸びと住宅市場の底固さ、という方向を示していたため、MPC開催前の段階で確実と見られていた。
(1)トレンドを上回る成長の持続
4月25日に公表された1~3月期のGDP成長率は、昨年7~9月期、10~12月期と同じ前期比0.7%で、長期のトレンド(前年比2.5%)を上回る成長の持続が確認された。
需要項目別の内訳は今月25日の公表まで明らかにはならないが、2月の貿易統計(4/12公表)は外需の悪化傾向の持続、1~3月期の小売統計(4/20日公表)は前期比0.4%と消費拡大テンポが緩やかであったことを示しており、非製造業の旺盛な設備投資が成長を牽引したと推察される。
(2)インフレ率の上振れ
4月16日に公表された3月の生産者物価では、金属関連の価格上昇で、原油価格要因による投入価格の下落に歯止めが掛かり、産出価格は昨年10月のボトムの前年同月比1.6%から同2.7%まで上昇したことがわかった。産出価格の上昇は、金属や機械で価格転嫁が進みつつあることが原因と考えられる。
4月17日に公表された3月の消費者物価上昇率(以下、CPI)は前年同月比3.1%とBOEのインフレ目標の2%±1%の範囲を突破、インフレターゲティング制の下、BOEの説明責任が規定された97年以降初めて、財務相への公開書簡の送付に至った。
公開書簡の中では、CPI上昇率の半分は、「予想を上回るペースでの国内エネルギー価格の上昇」と「天候不良による食品価格の上昇」にあり、残りの半分は、経済成長の加速によって、「原油高で圧縮されたマージンの回復」を図る企業の価格設定行動の変化によるものと説明された。
(3)貸出、マネー・サプライの高い伸びと住宅市場の底固さ
利上げの再開で、貸出やマネー・サプライの加速には歯止めが掛かったものの、水準自体はなお高い。個人向けの貸出では、消費者信用の伸び率は明確に鈍化しているが、住宅担保貸出は緩やかながら伸びを高めている。
住宅価格の騰勢にも、利上げの再開で歯止めがかかったが、ロンドンを中心に需要が強い一方、供給が不足しているため、なお二桁の伸びが続いている。
(2007年05月11日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1832
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
伊藤 さゆりのレポート
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