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コラム
2007年04月23日
所得代替率アップの謎
去る2月、新しい人口推計に基づく厚生年金の給付水準見通しが厚生労働省から公表された。近年の動向を受け、将来の出生率見通しが「1.39で安定」から「1.26で安定」に下方修正されたにもかかわらず、基本ケースの給付水準(所得代替率)が前回試算より上昇する(50.2%→51.6%)とされたことに疑問を抱いて調べてみた。
出生率の他に長寿化がさらに進んでいることも給付水準押し下げ要因になる。公表資料によれば、出生率低下と長寿化の進行という2つの人口動態要因により、4.5ポイント給付水準が押し下げられるという。それにもかかわらず、試算結果は1.4ポイント上昇している。何故か?
出生率の他に長寿化がさらに進んでいることも給付水準押し下げ要因になる。公表資料によれば、出生率低下と長寿化の進行という2つの人口動態要因により、4.5ポイント給付水準が押し下げられるという。それにもかかわらず、試算結果は1.4ポイント上昇している。何故か?
運用利回りの見通しは4%超
それは一にも二にも運用利回りを高く見込んだ故である。前回試算では3.2%であった2012年以降の運用利回りが、今回試算では4.1%と想定されている。
といっても、アプリオリに4.1%が置かれている訳ではない。過去15-25年間の平均実質長期金利(10年国債応募者利回りからその時点の物価上昇率を差引いた数値)を勘案して将来の実質長期金利を2.7%と見込み、別途想定した物価上昇率1%を加えて名目長期金利を3.7%と置く。これに、株式等への分散投資を行うことによる追加的な収益率0.4%を加え、4.1%ができあがるという寸法である。
その一方で、名目GDP成長率は、将来の実質GDP成長率を1%と見込み、これに物価上昇率1%を加えた2%と想定されている。つまり、長期金利が名目成長率を2ポイント弱上回ると想定されている訳だ。
といっても、アプリオリに4.1%が置かれている訳ではない。過去15-25年間の平均実質長期金利(10年国債応募者利回りからその時点の物価上昇率を差引いた数値)を勘案して将来の実質長期金利を2.7%と見込み、別途想定した物価上昇率1%を加えて名目長期金利を3.7%と置く。これに、株式等への分散投資を行うことによる追加的な収益率0.4%を加え、4.1%ができあがるという寸法である。
その一方で、名目GDP成長率は、将来の実質GDP成長率を1%と見込み、これに物価上昇率1%を加えた2%と想定されている。つまり、長期金利が名目成長率を2ポイント弱上回ると想定されている訳だ。
名目成長率と長期金利の関係如何?
これに関連して想起されるのが、1年余り前に展開されていた「名目成長率・長期金利」論争である。竹中総務大臣や中川自民党政調会長(いずれも当時)は、名目成長率は長期金利を上回って推移するはずで、この場合、経済成長による税収増が国債利払いの増加を上回り、将来の財政見通しはさほど暗くない(従って消費税率の引き上げは急がない)と主張し、それが政府・与党の多数意見だったようだ。
筆者にこうした見通しの当否を論ずる知見はないが、2つの見通しに整合性がないことだけは分かる。何とも面妖なことである。
筆者にこうした見通しの当否を論ずる知見はないが、2つの見通しに整合性がないことだけは分かる。何とも面妖なことである。
(2007年04月23日「研究員の眼」)
明田 裕
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