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- 『研究員の眼』創設にあたって
コラム
2007年04月01日
1.はじめに
ニッセイ基礎研究所ではこの度のホームページの改訂を機に新しい情報発信コーナー「研究員の眼」を設けることにした。
当基礎研究所には、日頃マスコミに名前の出る機会の多いエコノミスト達以外にも様々な専門領域を持った研究員が在籍しており、幅広い分野における研究活動にいそしんでいる。
その研究成果の多くは、研究所の定期刊行物である「所報」「REPORT」等のほか、専門誌や学会報告或いは受託研究報告書等の形で発信し、様々なテーマに関する問題提起や提言を行ってきている。
ただ、これらの発信には発行サイクルや紙幅、更には公開対象の制約もあり、その時々のホットな話題に対して「一家言」を持つ研究員が自由に発信するといったことは困難である。
しかしながら、一人一人の研究員が専門家としてより高い水準に達し、多様な専門家集団のエネルギーが結集した質の高い研究所であることを目指す為には、より多くの研究員が個人の資格と責任において意見を公表し、評価や批判を受けながら自らの力を高めて行くということも必要ではないかと考えた。
このコーナーでは幅広い分野の研究員が、世の中の事象に関してそれぞれの知識と見識を踏まえて自由に意見を開陳して行くという形での運営を予定している。勿論表現の不穏当なものに関しての点検は行うものの、意見にかかる部分については敢えて会社としての摺り合わせは行わず、あくまで個人の意見であることを明確にしつつ発信することとしたい。
読者の方々からの忌憚のないご叱責・ご助言を期待したい。
当基礎研究所には、日頃マスコミに名前の出る機会の多いエコノミスト達以外にも様々な専門領域を持った研究員が在籍しており、幅広い分野における研究活動にいそしんでいる。
その研究成果の多くは、研究所の定期刊行物である「所報」「REPORT」等のほか、専門誌や学会報告或いは受託研究報告書等の形で発信し、様々なテーマに関する問題提起や提言を行ってきている。
ただ、これらの発信には発行サイクルや紙幅、更には公開対象の制約もあり、その時々のホットな話題に対して「一家言」を持つ研究員が自由に発信するといったことは困難である。
しかしながら、一人一人の研究員が専門家としてより高い水準に達し、多様な専門家集団のエネルギーが結集した質の高い研究所であることを目指す為には、より多くの研究員が個人の資格と責任において意見を公表し、評価や批判を受けながら自らの力を高めて行くということも必要ではないかと考えた。
このコーナーでは幅広い分野の研究員が、世の中の事象に関してそれぞれの知識と見識を踏まえて自由に意見を開陳して行くという形での運営を予定している。勿論表現の不穏当なものに関しての点検は行うものの、意見にかかる部分については敢えて会社としての摺り合わせは行わず、あくまで個人の意見であることを明確にしつつ発信することとしたい。
読者の方々からの忌憚のないご叱責・ご助言を期待したい。
2.リスク社会の安全弁
ところで、我々生活者は様々なリスクに囲まれて生活している。つい先日の能登半島地震のような天災もあれば、インフルエンザや生活習慣病にかかって休業を余儀なくされたり、予定外の医療費支出で家計が圧迫されたりすることもある。更に、現在の高齢社会の下では予想以上に生き延びてしまうリスクも意識されてきている。
こうした様々な社会的リスクが増大する中で、公的な仕組みである社会保障制度で対応しきれない部分については、生活者に「自助努力」「自己責任」が求められる事になるが、「小さな政府」の動きの中では、より一層そのウエイトが高まってこざるを得ない。
生活者は否応なく、自らの身に降りかかってくる様々なリスクを想定して、それを避ける為の工夫や万一起きた場合の備えを講じてゆくことになるが、リスクのリスクたる所以はあくまでそれが現実に発生するか否かが誰にもコントロールできないところにある。
老後に備えて、欲しいものも我慢してひたすら貯金をした挙げ句、受取る遺族が無くて多額の遺産が国庫に入ったり、十分あるつもりの蓄えが、徐々に取り崩している内に乏しくなり、日常の支払いにも不安を感じるようになったり、というケースは決して珍しくない。
こうした、個人の力だけでは対応しきれなかったり、極めて効率の悪い対応しかできないリスクに備える上で、高度な保険数理と大きな保険群団を構成することによる発生確率の安定性を武器とする保険制度は欠かせないものになっている。
ただ、その前提として、「保険会社がどの範囲のリスクを引き受けているのか、についての契約者との間で明確な認識の一致」と、「どのような条件の下でも約定に従った完全な義務の履行がなされるであろうこと、についての契約者の盤石な信頼」が不可欠である。
その意味で、一昨年来の保険金・給付金支払い漏れ或いは請求案内漏れ問題に対する、保険業界の真摯な取り組みによって、どこまで顧客の信頼が取り戻せるかは、リスク社会における最後の安全弁が有効に機能するかどうか、を決定づける極めて重大なポイントとなろう。
保険会社を母胎とする研究機関としては、こうした保険に求められる社会的な使命をより有効に果たすべく、人生の各ステージにおけるリスクの所在と、保険システムを活用することによってリスクを効率的に回避・処理してゆく為の様々な方策を発信してゆく責任がある。
生活研究部門では平成19年度の部門の重要プロジェクトとして「生活リスク総合調査」を立ち上げ、幅広い分野の研究者が協力して効果的な発信をしてゆきたいと考えている。
こうした様々な社会的リスクが増大する中で、公的な仕組みである社会保障制度で対応しきれない部分については、生活者に「自助努力」「自己責任」が求められる事になるが、「小さな政府」の動きの中では、より一層そのウエイトが高まってこざるを得ない。
生活者は否応なく、自らの身に降りかかってくる様々なリスクを想定して、それを避ける為の工夫や万一起きた場合の備えを講じてゆくことになるが、リスクのリスクたる所以はあくまでそれが現実に発生するか否かが誰にもコントロールできないところにある。
老後に備えて、欲しいものも我慢してひたすら貯金をした挙げ句、受取る遺族が無くて多額の遺産が国庫に入ったり、十分あるつもりの蓄えが、徐々に取り崩している内に乏しくなり、日常の支払いにも不安を感じるようになったり、というケースは決して珍しくない。
こうした、個人の力だけでは対応しきれなかったり、極めて効率の悪い対応しかできないリスクに備える上で、高度な保険数理と大きな保険群団を構成することによる発生確率の安定性を武器とする保険制度は欠かせないものになっている。
ただ、その前提として、「保険会社がどの範囲のリスクを引き受けているのか、についての契約者との間で明確な認識の一致」と、「どのような条件の下でも約定に従った完全な義務の履行がなされるであろうこと、についての契約者の盤石な信頼」が不可欠である。
その意味で、一昨年来の保険金・給付金支払い漏れ或いは請求案内漏れ問題に対する、保険業界の真摯な取り組みによって、どこまで顧客の信頼が取り戻せるかは、リスク社会における最後の安全弁が有効に機能するかどうか、を決定づける極めて重大なポイントとなろう。
保険会社を母胎とする研究機関としては、こうした保険に求められる社会的な使命をより有効に果たすべく、人生の各ステージにおけるリスクの所在と、保険システムを活用することによってリスクを効率的に回避・処理してゆく為の様々な方策を発信してゆく責任がある。
生活研究部門では平成19年度の部門の重要プロジェクトとして「生活リスク総合調査」を立ち上げ、幅広い分野の研究者が協力して効果的な発信をしてゆきたいと考えている。
(2007年04月01日「研究員の眼」)
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