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- 税収増なるも、歳出配分の余裕度は乏しい地方財政
1.スリム化が進む財政規模 ○ 地方公共団体に関する2005年度普通会計決算速報によると、47都道府県の歳入総額、歳出総額はともに7年連続で減少している。 まず、前年度比0.6%減となった歳入総額の内訳に関しては、地方税が増収(5.1%)を果たしたものの、三位一体の改革に伴う国庫支出金の削減(-8.2%)と地方債の発行抑制(-20.3%)が税収の伸びを大きく上回るマイナスだったことが大きい。地方交付税には補助金からの振替分が加わった一方、それ以外の部分では全般的な交付抑制が続き、総額としては微減(-0.9%)にとどまった。歳入の内訳を都道府県毎に見ても、地方税は39都府県で増加、国庫支出金は41都道府県で減少、地方債は全都道府県で減少、交付税が2%以上増えたのは5道府県のみというように、変化の傾向は全体とほとんど変わらない。 47都道府県の歳入の内訳(2005年度) 47都道府県の歳出の内訳(2005年度) ○ 以上のように、金額ベースで見る限り、都道府県の減量経営への取り組みと結果としての財政規模のスリム化は明白であろう。 もっとも、個々の歳出に対してどのような歳入を割り当てることができたのか、予算段階でどのような歳入に基づいてどのような歳出を予定することができたのかという意味において、財源手当てという裏づけを伴った歳出配分の自由度が改善しているのかどうかについては、単なる金額から判断することはできない。決算統計において、その判断材料を提供する指標として公表されているのが、「経常収支比率」である。この指標は財政構造の弾力性を表す指標と説明されるが、定義を簡略化して言えば、経常的な収入のうち経常的な経費に充てられた割合を示すものである。すなわち、経常的な収入のうち経常的な経費に充てられなかった残余の割合によって、臨時的な経費、任意性の高い経費をどれだけ賄うことが出来るかという自由度を表す指標と言える。かつては都道府県の経常収支比率は80%以下であることが望ましいと言われたが、現状ではそのような都道府県は存在しない。もし、経常収支比率が100%を上回っている場合には、臨時的な収入までも経常的な経費に充てていることになるから、臨時的な経費、任意性の高い経費への配分の余地は狭められ、財政構造が極めて硬直的になっていると言うことができる。 ○ この指標の持つ深い意味を理解するには、地方公共団体の歳入のうち、地方税・地方譲与税・地方特例交付金・地方交付税については使途の限定されない一般財源であるが、国庫支出金や地方債に代表されるように残りの歳入項目はそれぞれ使途が決まっている特定財源であるということを出発点にして考えなければならない。経常的な経費に関する予算を執行する過程では、費目毎に決まっている特定財源をまず割り当て、次に、経常的に収入される一般財源が割り当てられる。そして、その残余と臨時に収入される一般財源及び固有の特定財源が臨時的経費に充当される。このような考え方に基づいた書式に従って現実の決算書も作成されている。ちなみに、臨時的経費の典型は投資的経費であり、国庫負担金や地方債の発行によって賄えない部分は一般財源に拠らなければならないし、将来の償還負担が重くなることを避けるには、公共事業の執行段階で地方債以外の財源を手当て出来ていることが重要である。そうした余裕度や自由度を表しているのが経常収支比率である。 やや専門的な話になるが、減税補填債、臨時財政対策債のように狭義の一般財源ではなくても一般財源に準ずる歳入は、指標算出上は広義の一般財源として扱われるため、これらを含めて「一般財源等」と称される。2005年度における47都道府県の「経常的に収入される一般財源等」は「経常的に収入される一般財源」より6.9%も大きいから、歳出の財源を確保しなければならない地方公共団体にとっては、「経常的に収入される一般財源等」の「等」の部分といえども、単なる呼称や決算事務上の問題として済ませられる次元のものではないであろう。 47都道府県の経常収支比率の推移 以上を踏まえると、都道府県にとって、地方税収の増加など明るい材料はあるものの、歳出配分の余裕度、自由度という面で、困難な状況は依然続いていると言うべきであろう。 |
(2006年11月06日「エコノミストの眼」)
石川 達哉
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