- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 財政・税制 >
- 消費税の逆進性の問題に関する考察
- 消費税率の引き上げ議論はひとまず来年度以降に先送りされた。しかし、決して将来的に消費税の増税の可能性がなくなった訳ではない。今後の、税率の引き上げに向けた課題として、消費税の逆進性の問題がある。逆進性とは、消費税は全ての所得階層に対して同率の税率が課せられるが、一般的に、低所得者層のほうが高所得者層に比べて消費性向が高いため、相対的に低所得者に対する負担が高くなってしまうという問題のことを指す。
- 家計調査の世帯別の収入・支出データを用いた分析からは、年間可処分所得が低くなればなるほど、世帯における消費税の課税対象項目に対する消費性向(本稿では課税消費性向と呼ぶ)が高くなるという関係が見られ、これより消費税率の引き上げを実施することで、低所得者層で負担が相対的に重くなっていき、「逆進性の問題」がより顕在化してくる可能性を指摘できる。
- 反面、「食料」を除いた支出に対する消費性向と、可処分所得の間には、明確な関係は確認できず、所得が低くなるほど消費性向が高くなるという関係が見られない。このため、我が国でも食品に対して軽減税率を導入することが、逆進性の緩和に有効であることが示唆される。
- 今後、税率の引き上げを実施していくのであれば、軽減税率の導入などにより、逆進性の緩和を図っていく必要性が生じてくると考えられる。ただし、軽減税率には、「対象となる範囲をどのように設定するか」という点や、「消費税率が何%になってから軽減税率を導入するべきか」などの、見解を統一することが難しい問題が存在する。さらに、実際に軽減税率が導入されれば、業者の負担が増すことや、消費者にも購入の際に混乱が生じる可能性もあり、導入に向けてのハードルは決して低いものではない。
- 今後の消費税率の引き上げに向けた議論のなかでは、税率引き上げの「時期」と「幅」の問題のみに留まらず、軽減税率の導入など、逆進性の緩和や実施上の諸問題について、幅広く検討を進めていくことが必要であろう。
篠原 哲
研究・専門分野
(2006年11月01日「経済調査レポート」)
関連レポート
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年03月28日
“ガソリン補助金”について改めて考える~メリデメは?トリガー条項との差は? -
2024年03月28日
健康無関心層へのアプローチ -
2024年03月28日
中国経済:景気指標の総点検(2024年春季号) -
2024年03月28日
高齢者就業への期待と課題(中国) -
2024年03月28日
中国における結婚前の財産分与から見た価値観の変化
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
【消費税の逆進性の問題に関する考察】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
消費税の逆進性の問題に関する考察のレポート Topへ