- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 環境経営・CSR >
- CSR経営で何をめざすのか? -社会と企業の持続可能性の視点から-
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1.
2003 年以降、日本企業はCSR経営へ転換しつつあり、「環境報告書」も倫理・社会側面を盛り込んだ「CSR報告書」へと次第にシフトしている。
2.
環境側面(環境マネジメント、環境パフォーマンス)の開示は充実してきた。社会側面(労働・雇用、人権、商品責任、倫理・統治)も急増しているが、企業によりバラツキが大きい。
3.
社会側面は取組状況が中心であり、CSR経営の長期計画や成果の記載が少なく、実態がよくわからない。CSR経営の戦略や「めざす姿」が曖昧であるためである。
4.
CSR経営のキーコンセプトは「持続可能性」であり、地球環境問題から生まれた「持続可能な開発」に由来する。経済成長と環境問題や貧困問題の関係が議論されてきたが、さらに「社会の持続可能性」と「企業の持続可能性」に発展した。
5.
社会の持続可能性のためには、地球レベルと地域レベルの社会問題(グローバル・アジェンダとローカル・アジェンダ)の解決が不可欠である。
6.
グローバル・アジェンダは地球を一つの社会としてみた場合、「地球環境」と「地球社会」の持続可能性の促進、阻害要因の解消のための実践課題である。具体的には環境側面(温暖化、生物多様性など)、社会側面(労働・雇用、人権、汚職、競争、商品責任、消費者保護など)、および経済側面(納税、利益配分など)がある。
7.
その最終目的は地域間格差の固定化の排除による貧困・飢餓撲滅、生産・消費形態の変更、天然資源の維持・管理である。
8.
ローカル・アジェンダは地域の持続可能性のために、各地域に固有の社会問題を解決するための実践課題である。日本にも欧州や米国とは異なるジャパン・アジェンダがある。
9.
一方、企業の持続可能性は内外で頻発する企業不祥事を背景に認識が高まったが、「経営の誠実さ=広義の企業統治」でCSRに取り組むことで経営上のメリットが生まれる。
10.
欧米のCSR評価機関にも二つの流れがあり、一つは社会の持続可能性(社会的リターン)、他方は企業の持続可能性(経営的リターン)をめざしている。
11.
CSRは法的義務を超えるものであり、単なる社会貢献でもなく、企業が本業において自ら判断し実行する社会的に責任ある行動である。評価は後からついてくる。
12.
CSR経営戦略を確立にするには、「CSRの5W1H」の論点整理が不可欠である。自社CSRの目的、論拠、相手、内容、範囲、時期を自ら判断することである。
13.
この論点整理を統合すると、CSR経営の三次元モデル(事業の影響側面、ステークホルダー、事業の支配範囲)として表現できる。戦略的な優先順位が検討できる。
14.
なお、CSR経営においてステークホルダー重視は重要であるが、直接対話できる関係者だけに着目すると、その背後にある社会的課題が見えにくくなる危険性がある。
(2006年03月25日「ニッセイ基礎研所報」)
川村 雅彦
川村 雅彦のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2016/10/21 | ESG投資と統合思考のために-「サステナビリティのメガトレンド」を背景にビジネス・パラダイムの大転換 | 川村 雅彦 | 基礎研レポート |
2016/08/05 | 徒歩帰宅訓練、やってみました!-地上踏査でつくる頭の中の“ ナビゲーション・マップ” | 川村 雅彦 | |
2016/06/10 | 徒歩帰宅訓練、やってみました !~そうか、そうだったのか! 点と点がつながる地上踏査~ | 川村 雅彦 | 研究員の眼 |
2016/04/19 | 「ラストマンになる」という生き方~現代ビジネス版 『言志四録』 ともいうべき語録から~ | 川村 雅彦 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年03月28日
OPECプラスの軌跡と影響力~日本に対抗策はあるのか? -
2025年03月28日
トランプ2.0でEUは変わるか? -
2025年03月28日
韓国における最低賃金制度の変遷と最近の議論について -
2025年03月28日
新NISAの現状 -
2025年03月28日
トランプ政権2期目の移民政策-強制送還の大幅増加は景気後退懸念が高まる米経済に更なる打撃
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【CSR経営で何をめざすのか? -社会と企業の持続可能性の視点から-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
CSR経営で何をめざすのか? -社会と企業の持続可能性の視点から-のレポート Topへ