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1.
証券投資において、既存のインデックスを模倣するインデックス運用が重要な位置づけを得てきている。効率的な市場を前提とした場合、インデックス運用が合理的な投資スタイルであることは確かである。しかし、現実の市場が効率的だとはいえない。日本におけるバブルの形成と崩壊がその代表例である。同時に、投資家のすべてが投資パフォーマンスの最大化を意図して投資をしているわけではない。投資家に対する情報の提供にも効率的な市場を阻害する要因がある。それらに加えて、インデックス運用が模倣の対象とする指数自身の問題点も考えなければならないし、経済環境と企業業績の関係、さらにはその企業業績に対する投資家の反応も十分に考慮しなければならない。
2.
日本の株式市場におけるインデックス運用の合理性を検証するために、個別企業を対象として、1978年度から2003年度(決算年度ベース)までのROA(営業利益ベース)と株式投資収益率(インカムゲインとキャピタルゲインの合計)のデータをそろえた。分析の対象とする企業は銀行・保険を除く東証一部上場企業とし、さらに5月末時点で前年度および前々年度の決算データが得られるものとした。株式投資収益率は決算数値が公表された5月末以降、1年間のものとした。
3.
各年度における企業ごとのROAのバラつき度合いは名目GDPの対前年度伸び率と逆相関していることから、企業ごとの固定費効果の差異などを通じて、景気動向が企業業績の変動を増幅させていることが確認された。
4.
前年に比べたROAの変動幅をベースに、分析対象企業を10 に等分した。その結果、ROAの上昇幅が一番大きい分位の、リスク当たりの収益率が芳しくないことが判明した。このROAの上昇幅が一番大きい分位を除いて投資すれば、本稿でデータ分析の対象とした全銘柄に投資するよりも高い投資収益率が得られることになる。このことは、公表された決算データに基づいて(すなわち予測を行わずに、後追いで)銘柄を選別し、投資をしたとしても、インデックス運用よりも良好な投資パフォーマンスが得られる可能性を示唆している。少なくとも、「低コストだから、インデックスファンドが優れている」と即断しないことと、定量的な分析に基づいたアナリストの機能に着目し、その効果を分析することの実務上の重要性が示唆されている。
(2005年03月25日「ニッセイ基礎研所報」)
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