2001年07月25日

生保会社に対する「基礎利益」指標の導入

荻原 邦男

文字サイズ

■目次

1.「基礎利益」の導入
2.生保の利益をどう見るか
3.「基礎利益」は生保を見る指標のひとつ

■introduction

「基礎利益」とは
2000年度決算から生保会社のフロー収益を表す統一指標として「基礎利益」が導入された。
これは、経常利益から売却損益などの臨時的損益を除いたもので、「生命保険会社のフローの基礎的な収益の状況を示す指標」と位置づけられている。ニッセイ基礎研究所は2年前から「業務純益」指標の導入を提言してきたが、ほぼ同様の利益指標が導入されたもので、ディスクロージャー面での進展と評価される。

「基礎利益」の動向
2000年度の「基礎利益」は大手中堅10社計で20,900億円、対前年▲4.8%となった。「業務純益」(ただし、配当を控除)ベースで見ても、98年度(▲23%)99年度(▲13%)と低下してきていたが、今年度も引き続き減少となった。
超低金利の継続が予想されるなか(利差損要因の継続)、保有契約高の減少はペースダウンしたものの継続しており(費差益、死差益の縮小要因)、今後も「基礎利益」の減少が予想される。厳しい状況が続くと見なければならない。

導入を巡る経緯
「基礎利益」が導入された経緯を振り返ってみよう。従来はストック指標に偏重していた保険会社の健全性指標を、総合的に判断することを目的に、新たにフロー面の健全性を表すために導入された指標が基礎利益である。
昨年度、生保の破綻が相次いだ中で、契約者に保証した「予定利率」を運用利率が下回る、いわゆる「逆ざや」が問題視され、14社計で1兆5,000億円といった数字が強調して報道されるなど、あたかも生保の最終的な利益がマイナスであるかのような印象を与えた。さらに、「逆ざやは累積する」との一部報道も見られるに至った。基礎利益の導入により、「逆ざや」はあっても、それを上回る益があり、合計ではプラスになっていることを結果的に示すこととなった。

「基礎利益」はどのように受け止められたか
「基礎利益」は「利差益+死差益+費差益」にほぼ等しく、「逆ざやを埋めるに足る利益があがっている」ことは理解を得てきているものと思われる。ところが、こうした意図とは別に、マスコミの一部からは以下の指摘がされている。
(1)高い死亡率設定により死差益が多額に発生しており、問題である(儲け過ぎ論)。
(2)基礎利益の開示により、トータルで利益が出ている保険会社が多い。そうであるなら既契約の予定利率引き下げは不要ではないか。

Xでシェアする Facebookでシェアする

荻原 邦男

研究・専門分野

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【生保会社に対する「基礎利益」指標の導入】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

生保会社に対する「基礎利益」指標の導入のレポート Topへ