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コラム
2001年05月18日
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1.日本の高齢者世帯の貯蓄率もマイナス
老後の準備といえば、まず思い浮かべるのは貯蓄であろう。家計が保有する金融資産の総額は日本全体で1400 兆円あり、その8割を現預金と保険・年金準備金が占めている。そもそも、現役のときに資産を貯えるのは、引退したときにそれを使うためである。しかし、高齢者世帯の大半が実際に資産の取り崩しを行っているという事実はあまり知られていない。むしろ、一般には「日本の高齢者世帯の貯蓄率は高い」と思われているのではないだろうか。
確かに、世帯主が65 歳以上の勤労者世帯の貯蓄率は22.6%もあり、勤労者世帯全体(全年齢階層平均)の貯蓄率である27.9%と比べても遜色ない。しかし、世帯主が65 歳以上の世帯のうち勤労者世帯はわずかに1割に過ぎない。残り8割のうち、7割は無職世帯であり、2割が自営業等の世帯である。その65 歳以上の無職世帯の貯蓄率はマイナス8.8%である。
無職高齢者世帯の所得の中心は公的年金給付であり、そのほかは世帯主以外の世帯員の就労収入や金融資産から生じる利子・配当や仕送りによって支えられている。貯蓄率がマイナスとは、これらの収入から税を控除した後の可処分所得の額よりも消費の額の方が大きいという状況である。可処分所得を上回る消費に必要な資金は、資産の取り崩しによってまかなわれることになる。結局、多数派のライフサイクルに関して「所得の多い現役期間に貯蓄を行い、引退後は資産を取り崩して消費に当てる」というパターンが当てはまる点では、日本の家計も米国の家計とあまり変わらない。
確かに、世帯主が65 歳以上の勤労者世帯の貯蓄率は22.6%もあり、勤労者世帯全体(全年齢階層平均)の貯蓄率である27.9%と比べても遜色ない。しかし、世帯主が65 歳以上の世帯のうち勤労者世帯はわずかに1割に過ぎない。残り8割のうち、7割は無職世帯であり、2割が自営業等の世帯である。その65 歳以上の無職世帯の貯蓄率はマイナス8.8%である。
無職高齢者世帯の所得の中心は公的年金給付であり、そのほかは世帯主以外の世帯員の就労収入や金融資産から生じる利子・配当や仕送りによって支えられている。貯蓄率がマイナスとは、これらの収入から税を控除した後の可処分所得の額よりも消費の額の方が大きいという状況である。可処分所得を上回る消費に必要な資金は、資産の取り崩しによってまかなわれることになる。結局、多数派のライフサイクルに関して「所得の多い現役期間に貯蓄を行い、引退後は資産を取り崩して消費に当てる」というパターンが当てはまる点では、日本の家計も米国の家計とあまり変わらない。
2.住宅資産も取り崩す米国の高齢者世帯
日本の中古住宅市場も米国なみに活性化すれば、高齢者の資産活用の選択肢が増え、生活設計の幅も広がる。持家の全額を遺産としてこどもに残したいと考える高齢者ばかりではないはずだ。政策的に必要なのは、住み替えを通じて住宅資産の一部を金融資産に振り替えることが無理なく行えるような、中古住宅市場市場の整備であろう。
(2001年05月18日「エコノミストの眼」)
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