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■introduction
8年を超える景気拡大を続ける米国
先般発表された米国の第3四半期の実質GDP成長率は前期比年率4.8%と予想以上に力強い景気拡大を続けていることが確認された。だが、好調な米国経済にも減速の影は少しずつ忍び寄っている。米国が長期にわたる景気拡大を続けてこれたのは下図のようなメカニズムが働いていたからである。このうち、「低失業率と安定した賃金上昇率の両立」「情報関連分野を中心した設備ストックの増大と生産性の上昇」などの構造は今も崩れていない。
しかし、物価安定・金利低下・株価上昇などは少しずつ当てはまらなくなっている。
まず、消費者物価上昇率の高まりと株価上昇の一服で消費の伸びが低下する公算が高い。過去5年間を振り返ると、可処分所得の伸びは毎年6%弱でほとんど変わってない。しかし、消費の方はそれまでの3%台前半の伸びから97年3.7%、98年4.9%と加速している。99年はどうかと言えば、第4四半期の消費が前期比0%の伸びになった場合でも、暦年で4.9%の伸びが達成される。近年の消費好調を株価上昇による資産効果と切り離して考えることはできない。この資産効果が消失すれば消費は2~3%の堅実な伸びに落ち着くはずである。
ところで、今回発表されたGDP統計では過去40年間にわたる全面改訂も実施された。その中で、今までマイナスとされていた家計貯蓄率が上方修正され、家計の過剰消費体質はそんなに懸念する必要はないのではという声も聞かれる。しかし、家計貯蓄の上方修正は、(1)公務員年金の保険料を貯蓄に計上する、(2)消費と貯蓄の源である可処分所得算出の際に控除する税の範囲から固定資産税や相続税を除外する、という定義変更によってもたらされたものである。家計が能動的に貯蓄を行うという部分で数字が上方修正された訳ではない。新しい定義でみても貯蓄率が継続して低下しているし、貯蓄額の前年比は6年連続のマイナスとなっている。ストック面では、金融資産の増加は新たな貯蓄ではなくほとんどキャピタルゲインに依存している。つまり、株価上昇に後押しされた消費の構造は変わらない。
石川 達哉
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