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■目次
I.技術移転状況が競争力に影響
II.問題多い現地の雇用慣行
■introduction
アジアの主要都市における投資コストは全般的に格安であるが、 特にワーカーの人件費をみると、 労働集約産業の立地が難しくなったと言われる NIES 諸国でさえ日本の半分程度である。 ASEAN 諸国ではさらに安く、 20 分の1からせいぜい 10 分の1程度となっている。 アジアでは経済成長により各国で年率7~8%のペースで人件費が上昇しているが、 絶対水準では依然として安いという状況に変わりはないと言えよう。
ただし、 製造業とりわけ加工組立業種 (一般機械、 電気機械、 輸送用機械) では 90 年以降、 現地需要の拡大を背景に工場の機械化が進んだことから、 総コストに占める人件費比率は一貫して低下しており、 アジアの人件費の安さはそれほど大きなメリットではなくなっている。
むしろ問題となっているのが生産技術の移転度合いである。 最近ではアジア市場でのコスト競争が一段と激しさを増しているが、 量産工場ではできるだけ技術移転を進め、 日本人技術者の数を減らすことが価格競争力を向上させるうえで不可欠となっている。 日本人技術者は単身赴任でも一人当たり年間 1,500 万円程度の経費がかかり、 大きなコスト要因になっている。 このため最近の日系メーカーでは 「日本人は社長だけにする」 というのが目標になっている。
一方、 アジア市場でシェア拡大を図るためにはアジア仕様製品の開発も必要である。 もはや日本仕様品がそのままアジアで売れる時代ではない。 「アジア好みの製品をアジアで調達できる部品でつくる」 ために開発設計の現地化、 特に設計技術者の育成は重要な課題となっている。
(1997年04月25日「基礎研マンスリー」)
高橋 敏信
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