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- 1%成長、下期にやや改善-1997年度経済見通し-
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<要旨>
日本経済は95、96年度と2年連続で足踏みを経験した。現在、持ち直し局面にあるが、消費税増税のある97年度上期は3度目の足踏みに陥る恐れが強い。しかし、設備投資の大幅調整は終了、円高修正により外需は下げ止まり等でスパイラル的悪化は回避でき、下期景気は持ち直そう。現下の課題は産業構造調整・金融再編・行財政改革等を通じた日本経済の再生である。マクロ政策も従来型公共投資追加ではなく、減税と金融緩和基調の継続が望ましい。
- 97年の海外経済はおおむね96年並みとなろう。米国は、消費低迷等から96年下期より停滞局面にある。97年上期も景気停滞は続くが、(1)情報関連中心に設備投資は堅調、(2)家計バランスシート調整は97年央頃に終了等から下期は回復しよう。実質成長率は96年2.2%、97年1.9%となろう。欧州ではドイツは輸出依存の回復初期、イギリスは内需主導の景気加速局面にある。ドイツの成長率は96年1.4%が97年2.3%に、イギリスは96年2.2%が97年3.3%に高まろう。東アジア(NIEs、ASEAN、中国)の成長率は依然高いが、踊り場状況にあり、96年、97年とも7.5%に鈍化しよう。
- 日本経済は96年春から夏場の間、足踏み状況となった。足踏みは93年11月以降の回復局面では超円高等を背景とした95年度上期に続き2回目である。今回の要因は、(1)生産財在庫調整、(2)耐久消費財の1-3月の伸びの反動、(3)O(オー)157の影響(7-9月期民間消費を約▲0.2%下押しと推計)-であった。しかし、設備投資の増加基調が持続し、外需の成長寄与も小幅プラスに転じる中で、(1)在庫調整進展、(2)自動車販売復調、(3)O157もほぼ解消-となり、足踏みは上期に終了し、景気は再び持ち直し傾向にある。
- 景気は引き続き弱さを抱えているが、設備投資増加、外需改善等から97年度もかろうじて回復傾向を維持できよう。今後を左右する要因は以下のとおり。
プラス : (1)民需は回復傾向
・企業関係=設備投資のすそ野拡大、企業業績の増益傾向
規制緩和の設備投資拡大効果、半導体分野は97年度下期やや改善
・家計関係=雇用・所得環境のゆるやかな改善持続
(2)外需は下げ止まり・漸増(年度ベースで5年振りにプラス寄与に転換)
マイナス: (1)財政政策関連はマイナス要因
・財政緊縮=消費税増税、特別減税廃止、公共投資減少
・駆け込み需要の反動滅=消費、住宅、一部の設備投資
(2)構造問題は依然大きい(産業構造調整、不良債権問題等) - 実質成長率は、(1)消費税増税・特別減税廃止等による消費鈍化、(2)公共投資減少、(3)住宅投資反落-などから97年度1.0%(96年度2.4%)に鈍化しよう。成長率への影響は、プラス要因が趨勢的な一方、マイナス要因のうち、財政政策関連は上期集中なため、上期は3回目の足踏みとなるが、下期は緩やかな回復傾向に持ち直そう。
なお、(1)公共投資96年度補正1兆円(GDPベース、ほぼ全額97年度執行)、97年度当初予算は実質伸び率ゼロ、(2)消費税引き上げ(4月、3→5%)、(3)特別減税廃止(2兆円)、(4)公定歩合引き上げ(98/1-3月、O.5→1%)、(5)円レート年度平均105円。また増税等の影響は、(1)GDPには消費税駆け込み需要(96年度0.3%)、同反動減(97年度▲0.3%)、消費税デフレ効果(同▲O.5%)、特別減税廃止デフレ効果(同▲0.2%)、(2)97年度成長率には▲1.3%-と想定。 - 基本的には物価鎮静が続くが、消費税要因により消費者物価は4年振り、総合卸売物価は7年振りの1%台上昇となろう。円高修正等から輸入の伸びが大幅鈍化し、輸出の伸びを下回ることから、経常黒字の縮小傾向は96年度7.9兆円(GDP比1.6%)で止まり、97年度は8.8兆円(同1.7%)とやや増加しよう。
- 金融政策は景気回復力の弱さ、緊縮財政、不良債権問題、物価安定等の下で緩和スタンスが維持されよう。利上げは97年度下期以降となろう。ここでは、景気が足踏みから脱し、98年度には財政緊縮化ペースも鈍化とみられる中、97年度末までに公定歩合の小幅引き上げ(0.5→1%)が実施されるとみた。市場金利もやや強含みに向かおう。
(1997年01月01日「調査月報」)
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