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- 一進一退の景気回復、96年度は2.4%成長に-1996年度改定経済見通し-
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<要旨>
景気は96年春から再び足踏み状況となり、先行き懸念も多いが、設備投資の増加、外需下押しの軽減等から93年11月以降の緩やかな回復トレンドが維持されよう。前回見通し(7/9)同様、日本経済は政策の軸足を体質強化を目的とした構造改革に移行することが可能な状況になりつつあると認識する。現時点では、在来型公共投資の追加でなく、規制緩和推進を中軸に、行革への取り組み、特別減税継続と法人税減税、金融緩和継続が望まれる。
- 景気は4-6月期の生産減少、同GDPのマイナス成長、8月日銀短観の業況悪化等からみて、足踏み状況にある。前回見通しでも景気は一本調子ではないとみたが、足もとの景気状況はやや弱めである。うるう年による見掛け上のマイナス要因を除外すると、足踏みの背景は、(1)1-3月期高成長の反動、(2)生産財での在庫調整(鉄鋼、半導体等)、(3)O(オー)157の支出下押し-等とみられる。(3)はもとより、(1)、(2)も予想以上であった。
- バブル崩壊後の景気後退は93年10月に終了し、その後回復局面にあるが、当研究所・経済見通しで再三指摘したように産業構造調整や不良債権問題等から回復力は弱い。この回復力の弱さが、95年度上期の超円高下の足踏みと今回の足踏みの底流にある。
- 今後の景気は弱さを抱えているが、かろうじて回復傾向が維持されよう。なお、設備投資や生産等で業種・品目別に跛行性がみられ、海外生産シフトや輸入浸透度上昇、規制緩和による需要創出(通信等)等を通じた産業構造調整が進みつつあることが窺われる。
プラス : (1)設備投資はすそ野が拡大する形で増加傾向。企業業績も改善傾向
(2)失業率はミスマッチから高水準だが、雇用・所得環境は改善傾向で消費を下支え
(3)外需は縮小傾向にあったが、円高修正持続で今後、外需の成長寄与はプラスに
マイナス : (1)財政政策が景気抑制型(早期大型補正なし、97年4月消費税増税など)
(2)半導体市況の悪化による生産、企業業績、設備投資への下押し圧力 - 96年度の実質GDP成長率は、(1)円レート107円(95年度96円)、(2)公共投資追加0.7兆円(年末。災害復旧・基礎研究分野等)、(3)消費税引き上げ(97年4月、3%→5%)、駆け込み需要は96年度GDPを0.1%押し上げ、(4)特別減税2兆円継続(97年度)、(5)公定歩合据え置き(0.5%)-を前提に2.4%(前回:2.6%)となろう。前提はほぼ前回見通しと同じだが、消費の基調がやや弱く、わずかながら実質成長率を下方修正した。
景気の足踏みは7-9月期中には解消されよう。実質GDP成長率(前期比)は7-9月期はO157の消費抑制があるものの若干のプラスとなろう。97年1-3月期は97年4月の消費税増税を見越した駆け込み需要からやや高めとみられる。なお、97年度上期は、(1)駆け込み需要反動減、(2)増税のデフレ効果-から3回目の足踏みとなる恐れが強い。 - 経常収支黒字は96年度7.3兆円(名目GDP比1.5%)と93年度をピークとする黒字縮小傾向が続こう。なお、輸出増加と輸入伸び鈍化から黒字は96年度上期がボトムとなろう。
- 金融政策は、(1)景気は基調的には回復が続くが、カは弱い、(2)米国は景気減速に向かう、(3)消費税引き上げなど、財政政策は景気抑制的になる、(4)金融機関の不良債権問題の重石も続く-などから、96年度内に利上げ局面への転換は予想されない。
(1996年11月01日「調査月報」)
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