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- 現地化を進めるアジアの日系ノンバンク
1996年03月01日
<要旨>
- 日系ノンバンクのアジアでの活動が本格化し、顧客対象は日系企業から地場企業、現地消費者にシフトしつつある。アジア各国のリースマーケットは、法整備の進展度合いなどによって国ごとに発展段階が様々だが、高い経済成長を背景に設備調達の一手段としてリースに対する一層の需要拡大が見込まれる。特に地場の成長企業では、担保物件が少ないこともあって、リースを積極的に利用しようという動きが活発化している。
- アジア地域では、国によってリースに対する税制上、会計上の取扱いが異なるため、リースの定義に差違がみられるものの、ファイナンスリースが主流となっている。国別にみると、タイでは92年の税制改革でリースのメリットが明確になり、リース市場規模は91年から93年の2年間に約7倍に膨らんだ。一方、シンガポールではリースの税法上のメリットがなく、リースよりも割賦契約が主流となっている。また、インドネシアではリースに関する法制はグレーゾーンとなっている部分が多く、日本では制限されている「セールス&リースバック」が可能である上、リース料の支払い方法も定まっていないため、税金の繰り延べ効果を大きくできる。こうしたメリットが次第にユーザーへ浸透しつつあり、同国のリース市場は急拡大している。
- 東アジアでは新中間所得層が急速に拡大しており、現地の個人向け貸出、特に自動車ローンに注力する日系ノンバンクも増えている。以前は企業や一部の富裕層が顧客の中心となっていた新車需要は、社有車だけでなく企業のマネージャークラスなど給与所得層に広がりつつあるが、自動車の価格が高いため、ローンを利用する層が増え消費者信用市場が拡大している。アジア地域での自動車ローンの仕組みは、ハイヤーパーチェス(所有権留保付割賦販売)という形態が多い。これはクレジット会社が顧客に代わって希望商品(自動車など)を買い取って顧客へレンタルするものである。また、与信側が返済終了まで車検証を保管する方式をとっており、動産担保の役割を果たしている。
- 急速なモータリゼーションの進むタイでは新車購入者の約半分が自動車ローンを利用するといわれており、インドネシアでも自動車ローン市場は92年から94年の2年間で2.3倍に拡大した。また、シンガポールでは国内保有台数の総量規制によって、自動車(自家用乗用車)価格がわが国の約4倍と高いため、自動車ローンの利用が一般化している。
自動車ローン業務について、日系ノンバンクと地場ノンバンクを比較すると、(1)日系ノンバンクは邦銀から低コスト資金を調達することが可能で、低い貸出金利を強みに貸出額を伸ばしている、(2)地場ノンバンクの貸出金利は日系ノンバンクと比べて相対的に高いものの、長年の取引に基づく豊富な取引先や個人情報をもとに顧客開拓を進めている、などが挙げられよう。 - これまで各国では、リースや消費者金融に対する法律が未整備であったが、最近になって新たな規制の動きが出始めている。規制によって事業活動に制限が出てくる面もあるが、一方で市場が健全に発展していくための土台づくりができつつあるという見方もできよう。今後、ファクタリングやカードビジネスなど新たな金融サービスに対するニーズが高まることが予想されるが、成長分野に着目した地場・外資系企業の新規参入も相次ぐとみられ、競争は一段と激化しよう。
- 日系ノンバンクにとっては、顧客のローカル化を一層進めることが当面の目標となっている。顧客対象を広げると同時に貸倒を抑えるためには、営業拠点の拡充によるセールス体制の整備・強化や、審査能力の向上といった与信管理体制の強化が大きな課題である。さらに資金調達方法の多様化や周辺分野への業務多角化などもあわせて求められよう。今後は一層の経営効率化を進め人材の育成を行うとともに、安定した経営基盤作りを志向することが求められる。加えて日系ノンバンクは、規模の拡大のみを追求するのではなく、業務を行う上で地場企業との棲み分けに配慮した経営戦略を打ち出していくことも、アジア地域で末永く事業を行うためのポイントとなろう。
(1996年03月01日「調査月報」)
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増田 政紀
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
1996/03/01 | 現地化を進めるアジアの日系ノンバンク | 増田 政紀 | 調査月報 |
1994/06/01 | 新たな道を模索する日本の自動車産業 | 増田 政紀 | 調査月報 |
1992/09/01 | 最近の消費者ローン市場動向 | 増田 政紀 | 調査月報 |
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