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- 高齢社会にむけ今こそバリアフリーのまちづりの実現を
1994年11月01日
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<要旨>
- これまでの都市環境は社会的弱者への配慮を欠いていることが多く、そのため高齢者や身体障害者など何らかの心身的障害を持つ人々は日常生活に不便を強いられている。
- しかし心身の障害がそのままハンディキャップにつながるわけではない。物理的環境を整え、地域社会に理解が浸透すれば社会参加は十分に可能となり、ハンディキャップも著しく減少する。このように個人にとってハンディキャップの有無は社会的環境との相対的な関係で決まることが多く、人々の意識や制度、都市環境などハンディキャップとなる障壁(バリア)を取り除くため、社会全般で取り組むことが重要である。障壁を除去していくことをバリアフリーと呼ぶ。
- わが国は21世紀のはじめには4人に1人が高齢者になるという超高齢社会を迎えることになる。多くの人が老化によるハンディキャップを抱え生活していかなければならないか、高齢者も住宅や施設内に閉じこもった生活ではなく、積極的な社会参加が出来ることが望ましい。
- わが国で「福祉のまちづくり」の取り組みが開始されてからほぼ25年が経過している。欧米のノーマライゼーション(社会的統合)思想や障害者自立運動が追い風となり、国や自治体を中心にバリアフリーのまちづくりが進められて来た。しかし面的整備にまでは至らないこと、地域間で整備基準が異なる事などいくつかの課題も残している。
- さらに今日のように交通網の発達した都市部においてバリアフリーか面的広がりをもつためには、電車・パスなどの公共交通機関が利用しやすいことが重要な要素である。しかし現状では障害者や高齢者が安全かつ快適に交通機関を利用することは難しくなっている。
- 欧米諸国の交通機関に関するバリアフリー対策は「移動」を基本的人権とみなし、ハンディキャップを持つものの完全な社会参加と平等をめざしている。特にアメリカやスウェーデンは法律や規制により民間事業者に改善を義務付け、連邦政府、国庫等の補助制度を発足させている。
- バリアフリーの公共交通機関、地域環境整備のための基本的考え方は次の5つである。
(1)安全である (2)統合化されている (3)重点的に整備する (4)自由に使える (5)正しく理解する - ハンディキャップを持つ者自らが行動できるような環境をつくるためには大きな投資が必要である。しかし彼らの自立意欲を喚起し、介護負担を軽減させるなど実現後の効果は大きい。
- 「少数者への高額負担」としてバリアフリーのまちづくりをとらえる考え方は、もはや時代おくれであり、今後の高齢者の増加をにらめば、社会的コストとして今すぐ取り組むべき課題である。
- バリアフリーのまちづくりは一部の物的環境を改善することではなく、建築物などのバリアを除去し高齢者や障害者などの自立や社会参加を促進することにより、すべての人々の生活基盤も改善されるという考え方に立脚するべきである。
(1994年11月01日「調査月報」)
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