1992年12月01日

ガット・ウルグアイ・ラウンドとコメ関税化問題について

岸 道雄

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<要旨>

  1. 米国・EC間の農産物保護削減を巡る対立は、依然として続いており、7月のミュンヘン・サミットで盛られた「ウルグアイ・ラウンド年内合意」が危ぶまれている。一方、日本は、昨年末に出された包括最終合意案、いわゆる「ドンケル案」の「例外なき関税化」に対して、食糧安全保障を軸にコメの国内完全自給を求めて反対の意を表明し、現在のところ、米・EC間の対立を静観する形となっている。
  2. こうした中で、8月に米国、カナダ、メキシコの3国間で北米自由貿易協定(NAFTA)が合意され、サービス分野を含めた貿易、投資等の自由化を目指すこととなった。ECを始めとして、NAFTA以外にも、地域自由貿貿易を創設する動きが増えており、地域主義が高まりつつある。しかし、こうした地域主義の高まりはルールの設定、運用如何では保護主義につながる恐れがある。
  3. ウルグアイ・ラウンドの成功  多国間ルールの強化が日本にとっても、世界経済にとっても長期的にみて望ましいのだが、日本はコメ関税化反対が足かせとなって、積極的な対応ができない状況となっている。しかし、ドンケル案の関税化は緩やかな保護削減案とみられ、衰退しつつある国内農業の活性化のテコとする発想が求められる。
  4. 世界経済の分極化・地域主義の高まり・保護主義の拡大に対する懸念、国内農業の活性化、米国との2国間交渉の厳しさ、ドンケル案の保護削減の緩やかさ――を考慮すれば、日本はコメの関税化を受け入れるべきと思われる。ウルグアイ・ラウンドの成功はもちろんのこと、今後のガット体制の維持・強化、それに基づく国際貿易の繁栄に向けて「レスポンシビリティ・シェアリング」という認識下で、我が国は大胆かつ積極的な発言と行動が必要とされている。

(1992年12月01日「調査月報」)

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