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- 西独経済の抱える問題について -西独経済凋落説を洗う-
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■見出し
1.始めに
2.西独国民の豊かな生活
3.沈滞化した西独経済
4.政府の対応
5.今後の課題
結びにかえて
■始めに
西独経済は現在好調に推移している。'88年の実質GNP成長率は、暖冬による建設投資の増加、欧州諸国の景気好調に支えられての設備投資の盛り上がり等を背景として、3.4%と'79年の4.0%以来の高成長を達成した。しかし、暖冬は特殊要因であり、,'89年はこの要因の剥落、消費税の増税等により2.0~2.5%の成長に鈍化するとの見方が大勢を占めている。'70年代後半に日本、米国と並んで世界の“機関車”役を勤めた西独だが、'80年代を通じてみると他の先進国に比べて成長率の低さが目立っている。特に、西独と同様に大幅な貿易黒字国であり、また戦後奇蹟的とも言われる成長を遂げた日本と比べて、西独経済が種々の面において構造的に硬直化しているといった指摘も多い。昨年6-8月において、資本の流失に端を発したマルク安がこうした西独経済の停滞を背景にしたものであると見るむきが多かったのは記憶に新しいところである。
しかし、国民生活に目を転じてみれば、西独国民は世界の中で極めて高い生活水準を維特している。充実した社会資本と手厚い社会保衛、短い労働時間とこれに対する高賃金、安定した物価水準と、彼らの豊かなゆとりある生活には我々も国民生活の向上といった観点からはまだまだ見習うべき点が多い。ただ、こうした国民の豊かな生活に安住しているがゆえに西独経済の競争力が相対的に落ちてきているといった声が存在しているのも事実である。
現在、世界経済にとって大きな不安定要因である米国の「双子の赤字」、中南米を中心とした累積債務国の問題を、世界経済のインフレ無き持続的成長を維持しながら解決していくために、日本と並んで、西独は大きな役割を果たすことが期待されている。
本稿では、こうした点を踏まえて、まず西独国民の生活水準がいかに高いかを我が国と比較しながら確認し、次に西独経済の抱える問題について具体的な倹討を行い、そのうえ世界経済の持続的成長への貢献に対する西独政府の対応と今後の課題について述べてみたい。
(1989年03月01日「調査月報」)
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岸 道雄
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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1992/12/01 | ガット・ウルグアイ・ラウンドとコメ関税化問題について | 岸 道雄 | 調査月報 |
1989/03/01 | 西独経済の抱える問題について -西独経済凋落説を洗う- | 岸 道雄 | 調査月報 |
1988/08/01 | オーストラリアの経済構造と豪ドルの展望 | 岸 道雄 | 調査月報 |
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