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- 最近の企業金融行動の変化をさぐる
1991年07月01日
<要旨>
- プラザ合意後の金融緩和局面のうち、'87年以降企業では設備投資等の投資活動が積極化する中で資金不足幅が拡大した。ことに企業では同時期に実物資産投資の資金所要を大きく上回る外部からの資金調達を行ったため、金融資産と金融負債が両建てで急増する現象がみられた。
- こうした企業の外部資金調達の拡大のなかでも、資本市場からのエクイティファイナンスが大企業で急増し、'89年度には総調達額の4分1に達している。
- 先の金融緩和期をみると、金融資産への投資収益率が調達コストより高く、金融資産の積み上がりは企業が金融情勢に合理的に対応した行動とみることができる。またエクイティ調達の隆盛も株価上昇と低金利下で資本市場からの調達コストが借入コストを上回ったことが大きな要因である。
- また企業規模別、業種別に多様化が進んだことも特徴の一つである。大企業では、不動産・私鉄・海運等の従来より借入中心の調達形態であったデッ卜型業種は先の金融緩和期に資本市場調達のウェイトが低く財務体質の改善幅は小さいのに対し、素材業種が積極的なエクイティファイナンスにより借入金を大きく削減している。また中小企業は借入増により積極的に実物投資や金融資産投資を行ったため、借入金依存度はむしろ高まった。
- 金融引締め期以降の動きをみると、実物投資が拡大しており企業の資金不足額は依然大きい。中でも緩和期に資本市場から資金不足額以上の資金を調達していた大企業がエクイティ調達の不振により借入増に向かっている。
- 今回の引締め局面を業種別にみると、緩和期の金融行動の影響が色濃く残っている。金融緩和期に借入により積極的な投資を行ってきたデッ卜型の大企業や中小企業は依然借入依存度が高く収益悪化が懸念されるが、その他の大企業は金融緩和期に財務体質を強化しており、過去の引締め期に比べて収益への影響は小さい。また資金供給の面では土地関連監視業種の資金制約が懸念されるが、企業全体として資金繰りの逼追度合はさほどの深刻さはみられない。
- 最近の企業は資金調達運用の両面で機敏な適応力がみられるが、反面エクイティ調達や不動産投資のように積極的な行動が金融市場構造に不安定化させる側面もあり、企業金融行動の全体的なバランスが重要となってきている。
(1991年07月01日「調査月報」)
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小野 正人
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