- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 為替相場をどうみるか
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
一時安定したかのようにみえた為替相場が急に円安に振れて、市場はドル高期待一色になったが、最近に到りその行き過ぎを訂正するがごとく元の水準へ近づいている。いったいこの間に何が起こったのか、何がこのような為替相場の変動をもたらしたかについては納得できる説明は殆どなされていないといっていいだろう。米国の貿易収支の改善基調が定着し米国経済の安定的軟着陸が可能になったとか、あるいはG5、G7等における政策協調のきしみが出てきたとか、日本の政局混乱への不安等が理由としてあげられているけれども、どれもがこれだという説得力に欠けているようにみえる。
米国経済への評価についていえば、その見方は非常に変動している。ある時は大変悲観的にみるのが盛んになり、ある時は米国経済ほど強いものはないという超楽観的な意見が出るなど、ためにする評価の感が強く、言うならば為替相場の変動の理由をつけているとみたほうが正しいのではなかろうか。
G5、G7等における政策協調については、大きく破綻したのだという見方がある半面、今なお確実に守られているという見方と双方あるが、私は政策協調が破綻したというのも間違いであるが、政策協調に為替安定のための100%の効果を期待するというのも誤っていると思う。なぜなら、日本の政策というのは財政を締めて、金融を緩めており、米国においては金融を締めて、財政を緩め、欧州ではある国はインフレ対策、ある国は失業対策に重点を置いた政策をとっている等、各国の政策の手段が多様に異なっているのであるから、そもそも完全なる政策協調ができると思う事が誤りであろう。
日米を含め世界経済の総括的な調整の過程はまだ進行中であって、貿易、債務等の面において明らかなように均衡に近づいているとは言えない状況にある。従って、為替相場もその時々の現象に過敏に反応するという状態が当面続くとみるのが妥当であろう。このような状況下においては、国際貿易とか国際投資に関わる者としては、極端なポジションをとらないで、常にイーブンな状態を保ち為替相場の急激な変動に備えるという態度をとり続けていくのが望ましい対処の方法ではなかろうか。
(1989年08月01日「調査月報」)
このレポートの関連カテゴリ
細見 卓
細見 卓のレポート
新着記事
-
2025年04月30日
今週のレポート・コラムまとめ【4/22-4/28発行分】 -
2025年04月28日
リスクアバースの原因-やり直しがきかないとリスクはとれない -
2025年04月28日
欧州委、AppleとMetaに制裁金-Digital Market Act違反で -
2025年04月25日
世界人口の動向と生命保険マーケット-生保マーケットにおける「中国の米国超え」は実現するのか- -
2025年04月25日
年金や貯蓄性保険の可能性を引き出す方策の推進(欧州)-貯蓄投資同盟の構想とEIOPA会長の講演録などから
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【為替相場をどうみるか】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
為替相場をどうみるかのレポート Topへ