1989年01月01日

住宅ローン市場の現状と展望

窪谷 治

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【はじめに】

堅調な消費支出、消費者物価の安定、金利の低下、地価の急騰、住宅着工増といった環境の下、消費者ローン・住宅ローン等の個人ローン市場は急速に拡大してきた。

なかでも、資金供給側にとって長期安定的な資金運用手段である住宅ローンは、最近になって着実に残高を増加させている。

ここでは、地価急騰という特殊要因もからんだ住宅ローン市場のここ1~2年の動きと、都市銀行の市場への取組み状況、今後の展望等についてレポートしたい。


【要約】

  1. 個人向け住宅ローン残高の伸び率は、S58年以来一桁台に止まっていたが、S61年頃から伸び率が上昇、S62年には前年比+11%とS57年以来の二桁台回復となった。
  2. ただ、全ての業態で住宅ローンの残高が伸びている訳ではなく、業態によってはここ1~2年をとっても、横這いもしくは微増のところが多い。そのなかで都市銀行は、新規貸出額及び残高ともに際立った伸びを示しており、その注力振りが窺われる。
  3. 都市銀行の住宅ローンの伸びは、
    (1)企業貸出の低迷に伴う、家計部門への営業強化。
    (2)首都圏を中心とした地価高騰(それに伴う貸家着工増)。
    (3)金利低下による金利変動型住宅ローンの有利性。
    (4)他業態の既存住宅ローン市場への攻勢。
    等による。
  4. 住宅ローン増加要因の一つであった地価高騰に伴う貸家の着工増は、S64年以降減少が予想される等、住宅ローン残高伸び率はS62年をピークに徐々に低下してくるものと思われる。
  5. ただ、住宅ローンに対する需要は底固いものがあり、今後も残高ベースで5~7%程度の成長を続け、S65~66年頃には100兆円市場に達するものと思われる。
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