2014年11月17日

【マレーシア7-9月期GDP】前年同期比+5.6%~投資と輸出の鈍化が響いて減速~

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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1.7-9月期は前年同期比+5.6%

マレーシア統計庁(DOSM)は11月14日に2014 年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。実質GDP成長率は前年同期比(原系列)+5.6%と、前期(同:+6.5%)を下回ったものの、Bloomberg調査の市場予想(同+5.6%)と一致した。

マレーシアの実質GDP成長率(需要側、原系列)/マレーシアの実質GDP成長率(供給側)


2.堅調な消費を背景に緩やかな成長が続く

マレーシアの2014年7-9月期の実質GDP成長率は、7四半期ぶりに減速し、5%台半ばの成長となった。成長率低下の主因は、引き続き公共投資が低迷したことに加え、これまで堅調だった民間投資と輸出が減速したためである。特に民間投資については、これまで経済改革プログラム(ETP)を受けて好調に推移していただけに想定外の結果であったが、実際にETPの動向を見ると発表ベースの新規プロジェクト件数や投資額は減少傾向にあることが分かる。
先行きは、安定した雇用と賃金上昇を背景に堅調な個人消費が牽引役となり、5%台の緩やかな成長を辿ると見ている。輸出は、足元のコモディティ価格の低下の影響を受けて、これまで以上に緩やかな伸びとなるだろうが、先進国向け・ASEAN域内向けを中心に拡大基調が続くだろう。また、投資も低調な推移が続くものの、既存のプロジェクトの投資が下支えになるだろう。
先行きの懸念材料としては、財政健全化に向けた一連の取組みが挙げられる。インフレ率は、10月の燃料補助金の削減、来年4月の物品・サービス税(GST)の導入を受けて、4%台まで上昇し、消費・投資の下押し圧力になるものと見込まれる。ただし、政府はGST導入に伴う対策として、低所得者向けの給付金(49億リンギ)、個人所得税の減税(税率▲1-3%)、法人税の減税(税率▲1%)などを実施する予定である。今後、GST導入に伴って駆け込み消費とその反動は発生するだろうが、こうした対策によって景気の腰折れは回避できるものと予想する。

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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