2017年08月08日

AI(人工知能)は囲碁や将棋の必勝法等にどのような影響を与えていくのか

基礎研REPORT(冊子版)8月号

保険研究部 取締役 研究理事 兼 年金総合リサーチセンター長   中村 亮一

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はじめに

グーグル傘下のディープマインド社によって開発されたコンピューター囲碁プログラムのAlphaGo(アルファ碁)が、中国の世界最強とされるプロ棋士である柯潔(かけつ)氏との3番勝負で3戦全勝し、人間を超える実力を備えたことを証明した。

個人的には、コンピューター・プログラム等の進展によって、各種のボードゲーム(囲碁、将棋、チェス、オセロ等)の必勝法の解明等がどのような影響を受けてくるのかに、大きな関心を有している。

先手・後手有利の状況

各種のボードゲームの先手・後手の有利性については、以下の通りである。

「囲碁」については、明確に先手が有利と考えられており、先手の有利性を「コミ」という仕組みで調整している。コミは現在6目半となっている。

「将棋」についても、先手が有利と考えられているが、囲碁のような調整の仕組みはない。因みに、30連勝を阻まれた時の藤井四段は後手だった。

「チェス」も先手がかなり有利で、実力者同士の対局では、後手はまずは引き分けを狙うと言われている。

なお、先手と後手をランダムに決定するために、囲碁ではニギリ、将棋では振り駒等の方式が採用されている。

二人零和有限確定完全情報ゲーム

囲碁や将棋のようなゲームは、ゲーム理論において「二人零和有限確定完全情報ゲーム」として分類されている。

これらのゲームは、理論上は完全な先読みが可能で、双方のプレーヤーが最善の手を打てば、必ず、(1)先手必勝、(2)後手必勝、(3)引き分け、のいずれかになることが知られている。

ただし、選択肢が多くなると完全な先読みを行うことは困難になるので、人間の行うゲームとして成立している。コンピューターの場合、人間と比べれば、より多くのパターン解析を行うことができるため、一定のゲームにおいては、完全な解析を通じたゲームの結果の解明が行われている。

例えば、6×6の盤の「オセロ」については、双方が最善の手を打った場合、「16対20で後手が必勝」となることが1993年に証明されている。

コンピューターによる囲碁・将棋等の必勝法の完全解明の可能性

ところが、これだけコンピューターの性能が向上している現在においても、囲碁や将棋やチェスについて、その全てのパターンを解析して、結論を導き出すことについては相当な負荷がかかることから、いまだいかなる結論になるのか、については解明されていない。新たなIT技術の適用等が可能になってくれば、実現してくる可能性もあるのかもしれないが、現段階では困難だと考えられている。

計算機科学者の松原仁公立はこだて未来大学教授によれば、勝負が付くパターンの数について、「6×6のオセロ」は、10の30乗のレベルであるのに対して、(8×8の)オセロは10の60乗、チェスは10の120乗、将棋は10の220乗、囲碁は10の360乗のレベルになるとのことであり、解明には膨大な解析が必要になる。

コンピューターによる囲碁・将棋等の必勝法の解明の進展

AlphaGo は、「深層学習( DeepLearning)」という人間の脳をまねた多層構造のニューラルネットワークを用いた機械学習と、「強化学習(ReinforcementLearning)」という自己対局の繰り返しによって、自らで勝ち方を生み出すシステムを作り上げているようである。

これによれば、今後こうしたコンピューター・プログラム自身が、これまでにない新たな戦法を開発し、必勝法の解明がさらに進展していくこと、これを通じて、人間によるゲーム自体の醍醐味も増していくことも期待されていくことになる。

最後に

実は、必勝法の存在や先手や後手がどの程度有利なのかという点についてはあまり気にする必要がないのかもしれない。

AI(人工知能)がいくら高度に発展し、ゲームの必勝法を解明したとしても、結局はゲームのルールを設定するのは人間である。人間は、自分たちが決めたルールの中で、自らの頭で考え出した最善の手を尽くすことで、引き続きゲームの奥深さの魅力を感じつつ、ゲームを楽しむことができる、ということだろう。
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保険研究部   取締役 研究理事 兼 年金総合リサーチセンター長

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

(2017年08月08日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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