2017年06月09日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(6月号)~輸出は増勢鈍化も好調継続

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ベトナムの17年4月の輸出額は前年同月比21.8%増と、前月の同14.3%増から一段と上昇し、3ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出の伸び率は16年前半まで伸び悩んでいたが、年後半から主力の電気・電子製品を中心に勢いを取り戻しており、足元でも政府目標(17年は+6~7%)を上回る伸びが続いている。一方、輸入額は前年同月比22.8%増(前月:同27.2%増と、引き続き高水準を維持した。結果、貿易収支は1.9億ドルの黒字となり、前月から12.9億ドル増加した(図表9)。

輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同43.0%増(前月:同13.3%減)と大幅に上昇し、3ヵ月ぶりのプラスに転じた(図表10)。これはサムスン電子の新型スマホの発売が4月に開始したためであり、当面高い伸びが続くと見られる。またコンピュータ・電子部品が同40.8%増(前月:同53.7%増)、織物・衣類は同7.8%増(前月:同13.9%増)、履物は同14.2%増(前月:同19.0%増)とそれぞれ前月から低下したものの、高水準を維持した。農産品についてはコメ(同18.7%増)が7ヶ月ぶりのプラスに転じたほか、野菜(同42.6%増)が好調を続ける一方、コーヒー(同3.9%減)とゴム(同2.4%減)が落ち込むなど、品目毎にバラつきが見られた。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同27.2%増(前月:同13.1%増)が大きく上昇する一方、地場企業が同9.7%増(前月:同17.2%増)と低下した。
(図表9)ベトナムの貿易収支/(図表10)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの17年4月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比4.2%減(前月:同13.8%増と、医薬品の下振れで大きく低下して6ヵ月ぶりのマイナスとなった。輸出の伸びは医薬品の変動によって上下に振れながらも、基調としては資源価格の上昇や主力の電子製品と化学製品の需要が回復して増加傾向が続いていたが、足元ではベース効果の剥落によって輸出の勢いが鈍りつつある。なお、総輸出額は前年同月比0.6%増(前月:同15.9%増)と大きく低下し、総輸入額も同3.7%増(前月:同16.1%増)と低下した。結果、貿易収支は41.2億ドルの黒字と、前月から2.0億ドル黒字が縮小した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同1.2%増と、前月(同2.8%増)に続いて伸び悩んだ(図表12)。電子製品の内訳を見ると、通信機器(同27.4%減)やPC(同8.2%減)、ダイオード・トランジスタ(同14.9%減)が低迷した一方、IC(同5.4%増)やPC部品(同28.3%増)が堅調を維持するなど品目毎にバラつきがみられる。また電子製品と同じく全体の約3割を占める化学は同15.1%減と、前月の同24.4%増から急低下した。化学製品の内訳を見ると、医薬品が同42.0%減(前月:同15.0%増)と下振れ、石油化学製品が同9.5%増(前月:同39.5%増)と伸び悩んだ。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの17年4月の輸出額は前年同月比12.1%増と、高水準となったものの、前月の同21.1%増から低下した。輸出は16年から資源価格の上昇を受けて一次産品を中心に緩やかに持ち直し、年後半には主力の電子製品も増加に転じて大幅な拡大傾向が続いている。一方、輸入額は前年同月比0.1%減(前月:同24.0%増)と低下した。結果、貿易収支は20.5億ドルの赤字と、前月から2.5億ドル赤字が縮小した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同6.8%増と、4ヵ月連続のプラスとなったが、前月の同19.5%増から低下した(図表14)。電子製品の内訳を見ると、半導体デバイス(同7.7%増)が高めの伸びを維持した一方、これまで好調だった電子データ処理機(同1.6%減)が落ち込んだがほか、家電製品(同4.3%減)と電気通信機器(同1.3%増)が引き続き低迷した。その他9品目については、金(2,740.3%増)とその他鉱業製品(同199.7%増)、ココナッツオイル(同59.8%増)、機械・輸送用機器(同50.5%増)、金属部品(同27.9%増)、その他製造品(同11.7%増)、化学(同5.6%増)、イグニッション・ワイヤーセット(同3.7%減)と増加した品目が多かった。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2017年06月09日「経済・金融フラッシュ」)

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