2017年05月30日

マレーシア:11年連続で海外ロングステイ希望者の人気度トップ-その観光立国戦略からの示唆-

平賀 富一

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1――日本人の海外ロングステイ希望国・地域の人気度

2017年4月7日、一般財団法人ロングステイ財団が、日本人による海外でのロングステイ(長期滞在)の希望国・地域の2016年度調査のトップ10ランキング(「ロングステイ希望国・地域2016」)を発表した(図表―1参照)。
図表-1 海外でのロングステイの希望国・地域
写真1 上表のとおり、マレーシアが2006年以来11年連続で首位となっている。

多くの読者にとって、人気の高い観光先の国・地域と言えば、ハワイ、アメリカ本土、オーストラリア、ニュージーランド、カナダや欧州の先進地域、また、地理的に近いアジアの諸国・地域では、台湾、シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピン等が想起されよう。その中で、何故、マレーシアが11年の長期にわたり首位のポジションにあるのかについては興味があるところであろう。

2――ロングステイの人気滞在先としてのマレーシアの魅力や要因

2――ロングステイの人気滞在先としてのマレーシアの魅力や要因

ロングステイ財団では、以下のポイントをマレーシアの魅力として挙げている。

(1)長期滞在査証「マレーシア・マイ・セカンドホーム・プログラム(Malaysia My Second Home Programme: MM2H)」制度の充実、(2)気候、(3)治安、(4)医療水準に加え、(5)ロングステイ希望国トップとしてのイメージが定着していていることの5点である。
写真2 A.1年を通じて温暖な気候:赤道近くに位置し常夏のマレーシアは日中の平均気温が30度前後と温暖な気候なため、冬の寒さや花粉の心配なく過ごせる。

B.親日的で居心地の良さ:親日的な国民と穏やかな国民性で皆親切。多民族国家の為外国人でもすんなり受け入れてくれる。

C.ブロークンな英語でも意志疎通が出来る:国語はマレー語だが、英語が広く使われているものの、公用語ではないので、「きちんとした英語を話さなければいけない」というプレッシャーがなく、ジェスチャーを交えて意志疎通が出来るのも居心地が良い理由のつである。

D.日本人はパスポートで90日まで滞在が可能:日本人は特別なビザが無くても、1度の観光・商用目的の入国で最長90日まで滞在が可能(入国時6か月以上のパスポート残存有効期間があり、かつ90日以内に帰国又は第三国に移動する航空券を有する場合)

E.最大10年滞在可能な長期滞在ビザを政府が発行:連続して90日以上マレーシアに滞在する場合には「マレーシア・マイ・セカンドホーム」(MM2H)ビザを取得する必要があり、このビザを取得すると最長10年(更新可)マレーシアに滞在することが可能となる。

さらに、同ホームページの別の項では、人口約千万人のマレーシアは、マレー系・中国系・インド系、そして多数の部族に分けられる先住民族で構成される多民族国家で、それぞれの民族が持つ宗教、生活習慣の融合が独特な文化を生み、マレーシアの魅力を創り出していること、また、のんびりとくつろぐことの出来る砂浜、南国の熱帯雨林、魅力的な島々、神秘的で荘厳な山々など自然美に溢れる国であるとしている。
 
確かに上記の諸点は、重要なポイントではあるが、競合する他の国・地域と比べて、マレーシアだけが特に傑出しているわけではないとも感じられる。また、マレーシアは、世界遺産などの著名な観光名所や見どころが特に多いわけでもなく、生活する上でのインフラ、便利さ、効率性、サービスの水準・充実度は、ハワイ、オーストラリア、シンガポールなどの方が勝っているともいえる。
 
しかしながら、上記調査の結果においては、マレーシアが年連続でトップの評価を受けているという事実がある。その理由は、ロングステイならではの要件が重要であると思われ、以下ではその観点から考えてみたい。
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