2017年03月14日

海外資金による国内不動産取得動向(2016年)~アベノミクス開始以前の状況に後退~

金融研究部 主任研究員   増宮 守

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3――海外資金のセクター選好

海外資金による国内不動産取得額をセクター別にみると、大幅に増加した物流セクターを除き、多くのセクターで2016年の取得額は2015年の半分に満たなかった(図表-6)。

海外資金による物流施設の取得額は、2016年に大幅に増加した。ネット通販の拡大などを背景に、2015年第4四半期以降、物流施設の新規供給が著しく増加しており、さらに2018年まで続く見込みとなっている。大量供給は競争力に劣るエリアの賃貸需給を悪化させているものの、投資対象となる物流施設ストックを拡大し、投資市場の充実に寄与している。

ただし、海外資金による取得額は増加したものの、日本の物流施設に対する楽観的な見方が一方的に増えたとはいえない。2016年の海外資金による取得は、ほとんどが他の海外資金が売却した物流施設の取得であった。大量供給による賃貸需給への懸念に加え、今後の金利上昇が長期固定賃料契約を有する物流施設に特に不利になるとの見方もある。そのような中、海外資金による物流施設の取得額は増加すると同時に、売却額も大きく増加していた。

一方、2016年の海外資金によるホテルの取得額は大幅に減少した。2016年には、急拡大してきたインバウンド宿泊需要が減速し、新規供給の増加や民泊施設との競合など、ホテル市場の需給懸念も顕在化してきた。ただし、国内では、依然としてホテル投資に対する強気な見方は多く(図表-7)、2016年の国内のホテル取引額は、J-REITが牽引する形で増加していた6。国内での楽観的な見方に反し、海外では日本のホテル市場をより慎重にみている可能性もあり、今後の海外資金によるホテルの取得動向には注意が必要である。

その他、伝統的な不動産投資対象であるオフィスセクターにおいて不動産サイクルが明確に表れている。2016年の海外資金によるオフィスの取得額は2012年の水準も下回り、既に不動産サイクルの停滞期に入っているとの見方もできる。
図表-6 海外資金による国内不動産取得額(セクター別)
図表-7 今後、価格上昇や市場拡大が期待できるセクター(複数回答3つまで)
 
6 JLLによると、2016年の国内ホテルの推定取引額は、前年比+8%増加の約3,640億円。
 

4――海外資金のエリア選好

4――海外資金のエリア選好

海外資金による日本国内の不動産取得額を取得物件の所在地別(東京とそれ以外)にみたところ、2016年には東京の占める比率が大幅に縮小していた(図表-8)。2015年には、東京の比率が6割を超え、東京での取得額がリーマンショック以前に迫る水準となっていた。しかし、2016年には、東京の比率が過去最低となり、取得額も2009年に次ぐ非常に低い水準に落ち込んだ。一方、5大都市圏(東京、大阪、名古屋、福岡、札幌)以外の地方都市での取得額が増加していた。地方都市での取得増加については、大半は郊外あるいは地方に立地する物流施設の取得額が増加したためといえる。しかし、その他のセクターでも、利回りの低い東京都心での取得を断念し、少しでも高い利回りを求めて郊外や地方での取得を増やすケースが少なくなかった。2007年にも地方都市での取得が増加していたが、当時以上に、既に人口が減少している地方都市においては中長期の投資リスクが高まっていることに注意が必要である。

ちなみに、海外資金に限らずJ-REITについても、不動産取得額における東京都心5区の比率が2015年の28%から2016年に23%に低下しており、東京都心から郊外あるいは地方に取得先をシフトする動きがみられた。
図表-8 海外資金による東京の不動産取得額と全体に占める比率
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金融研究部   主任研究員

増宮 守 (ますみや まもる)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

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