2016年01月20日

住と学に費やし老細る-老後を見据えた貯蓄への歩み。固定費の見直しを。

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   北村 智紀

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1――はじめに

収入はわりとあるのだけど、お金が貯まらない。それには理由があります。貯蓄(ここでは、以降「金融資産」とします)は、もちろん、支出より収入の方が多ければ増えます:
 
金融資産の増分 = 収入(給与、その他)- 支出(変動費、固定費)
 
お金を貯めるには、収入を増やすか、あるいは支出を減らすかです。ここで、収入には給与やその他収入がありますが、どちらも、簡単に増やすことはできそうにありません。そうすると、支出を減らす必要があります。
 
支出は、変動費と固定費とに分かれます。このうち、変動費は旅行代、飲み代、趣味の費用などの経常的な支出ではないものです。一方、固定費は、家賃や住宅ローンの返済など住宅費、子供の教育費、食費などの経常的な支出です。こちらは簡単には減らせないものです。支出を減らすには、まず変動費を減らすことが考えられます。経常的でない分、簡単に減らせそうですが、お金の貯まらない人は、変動費を頑張って減らしても、大きな効果が見込めないことがよくあります。
 
一方、固定費は住宅購入や子供の教育といった人生の中でもお金がかかる費用で占めます。しかも、一度、支払い方や使い方を決めたら、なかなか変更できません。お金が貯まらない人は、このような固定費が収入に比べて多い可能性があります。
 
そこで、本レポートは住宅費や教育費という固定費が多いことが、お金が貯まらない理由になっているか否か、どうして住宅費や教育費が多くなってしまうのかについて独自のデータを利用して分析しました。
 

2――分析方法

利用したデータは2014年に筆者等がインターネットを利用して実施した「生活に関するアンケート」です。30~59歳までの男女が対象です。この中から、既婚者かつ子供がいる家計で、住宅を保有しているか、賃貸物件に住んでいる人に回答者を限定しました。未婚者、既婚でも子供がいない家計、社宅や親と同居している人は除外しました。これは、住宅費や教育費の分析上、できるだけ条件を揃えるためです。この結果、分析対象者は1,055人です。このうち、男性が462人、女性が593人です。
 
住宅費は、家賃や住宅ローンの毎月の支払額をアンケートで尋ね、家計年収(夫婦2人の年収の合計)に占める住宅費の割合の大きさをもとに、回答者を高・中・低の3つのグループに分類しました。図表1はこの3つのグループに分類した場合の各グループの特長を表しています。この3つのグループは概ね同人数となるようにしています。ただし、住宅ローンの返済は毎月の返済額だけであり、ボーナスによる返済額は含まれていません。列(1)は、家計年収に占める住宅費の割合(支出割合)、列(2)は、月平均の住宅費の支出額です。「住宅費低」は、住宅費の支出割合は約0%、月平均の支出額は0.3万円でした。このグループは、住宅保有者で住宅ローンを完済した人がほとんど占めています。「住宅費中」は、住宅費の割合は11%、月平均支出額は7.6万円です。「住宅費高」は、月平均支出額は10.5万円です。「住宅費中」に比べて約3万円の増加ですが、住宅費の割合は23%と大幅に上昇しています。このように住宅費が多いほど、家計年収に占める割合が高くなっており、他にまわす支出が制約されていることがわかります。
 
図表1:住宅費の特長
次に教育費は、毎月の教育費の支払額をアンケートで尋ね、家計年収に占める教育費の割合の大きさをもとに、回答者を高・中・低の3つのグループに分類しました。図表2はこの3つのグループに分類した場合の各グループの特長を表しています。(1)列目は、家計年収に占める教育費の割合(支出割合)、列(2)は、月平均の教育費支出額です。「教育費低」は、教育費の割合は約0%、月平均支出額は0.1万円です。ほとんど教育費を使っておらず、子供の年齢が低い、子供が公立の学校に通っている、あるいは子供が大学卒業直前だと考えらます。「教育費中」は、教育費の割合は5%、月平均支出額は3.1万円です。「教育費高」は、家計収入に占める教育費の割合は14%に上昇、月平均支出額も8.2万円に増加しています。またここでも、教育費が多いほど家計の支出が制約されることがわかります。
図表2:教育費の特長
次に、お金を貯められているか表す指標は、以下の2つを使用します。一つ目は、
 
金融資産年収倍率 = 金融資産 / 家計年収
 
これは、保有している金融資産が年収の何年分かを表す指標で、数値が大きいほど、お金が貯まっていることを表します。一般に、年収が高ければ、金融資産も多くなる傾向がありますが、この指標は、このような関係を考慮しながら、お金のため具合を調べることができます。二つ目は、
 
目標到達率 =(現在の)金融資産 / 65歳時点での必要金融資産
 
ここで、「65歳時点での必要金融資産」は、回答者本人が65歳時点で老後の生活のために必要だと考えている金融資産額です。いわば、退職するまでに貯める目標額です。これを現在の金融資産額で割っているため、この指標は、目標金融資産までの到達率を表しています。数値が大きいほど、お金が貯まっていることを表します。100%の場合、現在時点で65歳以降に必要と考えられる金融資産を保有していること、100%以上の場合は、現在の金融資産が必要な額を超えていることを表します。
 
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

北村 智紀 (きたむら ともき)

研究・専門分野
年金運用・リスク管理、公的年金

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