2016年01月05日

最近の人民元と今後の展開(2016年1月号)

経済研究部 上席研究員   三尾 幸吉郎

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  • 12月の人民元相場(対米国ドル)は基準値・市場実勢ともに緩やかに下落する展開となった。ほぼ前回レポートで予想したとおりの展開となったが、取引レンジ(1米国ドル=6.35~6.45元)を下に抜けており、想定以上に下落の勢いは強かったといえる。

  • 今後1月前半の人民元(市場実勢)は1米国ドル=6.5元台で弱含みの展開が予想される。米利上げが実施されたことで、現在は各通貨が相応な相場水準を模索中であり、人民元は残りの割高感を解消する途上にあることから、下値を探る展開となりやすい。但し、1日発表の製造業PMI(特に生産指数)が改善したため、19日に発表される10-12月期成長率は前四半期を上回る可能性が浮上しており、1月後半には戻りを試す可能性がある。

[ 12月の動き ]

12月の人民元相場(対米国ドル)は基準値・市場実勢ともに緩やかに下落する展開となった。基準値の当月高値は4日に付けた1米国ドル=6.3851元、当月安値は最終営業日(31日)に付けた同6.4936元となり、12月は前月末比で1.5%の元安・ドル高となった。一方、市場実勢(スポット・オファー、中国外貨取引センター)も、3日に付けた1米国ドル=6.3981元が当月高値、31日に付けた同6.4938元が当月安値となり、12月は前月末比で1.5%の元安・ドル高となった(図表-1)。

前回レポートでは、12月前半は「米国で利上げが予想されるため下値を試す展開となり易い」、12月後半は「材料出尽くしから上値を試す可能性もあるが、人民元が上値を試すには力不足で、買戻しがあっても小幅かつ一時的」と予想、ほぼ想定どおりの展開となった。但し、取引レンジ(1米国ドル=6.35~6.45元)を下に抜けており、想定以上に下落の勢いは強かったといえる(図表-2)。
 
(図表1)人民元(対米国ドル)の価格推移/(図表2)最近の人民元レート(対米国ドル)
一方、世界の通貨を見ると、主要通貨は米国ドルに対して堅調で、欧州ユーロは前月末比2.9%上昇、日本円も同2.5%上昇した。12月には米国で利上げが実施されたものの、織り込み済みだった上、今後の利上げペースは緩やかとの見方が浮上したため材料出尽くしとなった。一方、新興国通貨は概ね軟調となり、ロシア(ルーブル)が原油安を受けて同9.6%下落したほか、アジア通貨も韓国(ウォン)が同1.2%下落するなど概ね軟調だった(図表-3)。インド(ルピー)はやや上昇したが、11月に米利上げを織り込む過程で下落していた点を踏まえると小反発の域をでない。このような市場環境下で、中国の通貨(人民元)は米利上げ実施後の反動が極めて小幅に留まったことで、他のアジア新興国通貨に対する割高感は解消されつつあるが、まだ若干残る(図表-4)。
 
(図表3)12月の主要新興国通貨の変化率(対米国ドル、前月末比、WM/Reuters)/(図表4)アジア新興国通貨(対米国ドル)の推移

[ 今後の展開 ]

(図表5)CNYとCNHの推移 さて、今後の人民元(市場実勢)の動向だが、1月前半は1米国ドル=6.5元台で弱含みの展開が予想されるものの、1月後半には人民元が戻りを試す可能性がある。12月に米利上げが実施されたことで、現在は各通貨が相応な相場水準を模索中であり、人民元は残りの割高感を解消する途上にあると見られることから、下値を探る展開となりやすい。また、オフショア市場(CNH)での元急落を受けて(図表-5)、中国人民銀行は一部の外銀を対象に一部外為業務を一時停止させる行政指導を行なった模様である。これを契機にCNHとオンショア市場(CNY)の価格差を利用した裁定取引が巻き戻されれば、CNYには元高要因となってもCNHには元安要因となる。しかし、1日に発表された製造業PMI(特に生産指数)が改善、19日に発表される10-12月期成長率が前四半期(前年同期比6.9%増)を上回る可能性が浮上してきた。成長率がやや上向いたとしても中国で利上げが視野に入るとは考え難いため反発の余地は限られるものの、1月後半には戻りを試す可能性があると思われる。

 

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経済研究部   上席研究員

三尾 幸吉郎 (みお こうきちろう)

研究・専門分野
中国経済

(2016年01月05日「経済・金融フラッシュ」)

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