2015年09月01日

【インドGDP】4-6月期は前年同期比+7.0%~内需主導の堅調な景気

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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015年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+7.0%の上昇と、前期(同+7.5%)とBloomberg調査の市場予想(同+7.4%)を下回った。

結果は期待外れだが、GDPを需要項目別に見ると内容は悪くない。政府消費と投資は改善したほか、個人消費は高い伸びが続いており、輸出の減少幅も前期より縮小している。
成長率低下の主因は、貴重品と誤差の寄与度が半減(合計1.2%ポイント減少)したことである。誤差の縮小は説明できないが、貴重品の低下については、昨年5月に金の輸入規制を緩和した影響が一巡したこと、また今年2月に同規制の撤廃で上振れた前期からの反動減が背景にあると見られる。今後も物価をうまくコントロールできれば、内需主導の経済成長が期待でき、ポスト中国としての評価が高まるだろう。

GDPの約6割を占める個人消費は引き続き景気の牽引役となっている。4-6月の消費者物価指数の伸び率は前年比5%前後と年明けから原油価格が底入れしたにも関わらず、低水準が続いた。低インフレによる家計の実質購買力の向上が、個人消費の高い伸びに繋がった。
また投資が2期連続で改善した点は好感できる。貸出残高とマネーサプライの伸び率はそれぞれ今年3月、4月の底打ち後に上昇しており、資金需要は改善に向かいつつある。しかし、年明けからの0.75%の利下げ幅に対して、貸出基準金利は商業銀行の不良債権問題が燻るために0.275%しか引き下げられておらず、投資の拡大ペースが大きく加速するとは見込みにくい。
先行きについては、物価は原油安による押し下げ効果が一巡する上に南西モンスーンの雨不足で食料インフレ懸念が燻っており、9月から物価上昇に転じるだろう。しかし、穀物の緊急輸入や備蓄穀物の放出など政府の予防措置が見込まれ、中央銀行のインフレ目標「2016年1月までに6%」が達成されるなど、安定したインフレ環境が続くと見られる。また9月の金融政策会合では0.25%の利下げが予想され、住宅投資や耐久財消費の拡大が見込まれる。さらに今年度予算で拡充されたインフラ支出も引き続き内需を押上げることから、景気は堅調に拡大するだろう。
経済成長のスピードをもう一段引き上げるには、税制や土地や労働市場などの諸改革を実行する必要がある。しかし、上院と下院のねじれのために夏季議会では改革法案を成立させることができず、来年4月を目指したGST導入は遅れる見込みだ。与党連合が上院で過半数を取るには州議会選挙で勝利を重ねる必要があり、当面は抜本的な改革は見込みにくい。新政権に対する期待が徐々に剥落するなか、外資系企業を中心に投資意欲が弱まる可能性には注意が必要だ。


インドの実質GDP成長率(需要側)/インドのインフレ率(CPI寄与度)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2015年09月01日「経済・金融フラッシュ」)

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