2006年03月25日

CSR経営で何をめざすのか? -社会と企業の持続可能性の視点から-

  川村 雅彦

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1.
2003 年以降、日本企業はCSR経営へ転換しつつあり、「環境報告書」も倫理・社会側面を盛り込んだ「CSR報告書」へと次第にシフトしている。
2.
環境側面(環境マネジメント、環境パフォーマンス)の開示は充実してきた。社会側面(労働・雇用、人権、商品責任、倫理・統治)も急増しているが、企業によりバラツキが大きい。
3.
社会側面は取組状況が中心であり、CSR経営の長期計画や成果の記載が少なく、実態がよくわからない。CSR経営の戦略や「めざす姿」が曖昧であるためである。
4.
CSR経営のキーコンセプトは「持続可能性」であり、地球環境問題から生まれた「持続可能な開発」に由来する。経済成長と環境問題や貧困問題の関係が議論されてきたが、さらに「社会の持続可能性」と「企業の持続可能性」に発展した。
5.
社会の持続可能性のためには、地球レベルと地域レベルの社会問題(グローバル・アジェンダとローカル・アジェンダ)の解決が不可欠である。
6.
グローバル・アジェンダは地球を一つの社会としてみた場合、「地球環境」と「地球社会」の持続可能性の促進、阻害要因の解消のための実践課題である。具体的には環境側面(温暖化、生物多様性など)、社会側面(労働・雇用、人権、汚職、競争、商品責任、消費者保護など)、および経済側面(納税、利益配分など)がある。
7.
その最終目的は地域間格差の固定化の排除による貧困・飢餓撲滅、生産・消費形態の変更、天然資源の維持・管理である。
8.
ローカル・アジェンダは地域の持続可能性のために、各地域に固有の社会問題を解決するための実践課題である。日本にも欧州や米国とは異なるジャパン・アジェンダがある。
9.
一方、企業の持続可能性は内外で頻発する企業不祥事を背景に認識が高まったが、「経営の誠実さ=広義の企業統治」でCSRに取り組むことで経営上のメリットが生まれる。
10.
欧米のCSR評価機関にも二つの流れがあり、一つは社会の持続可能性(社会的リターン)、他方は企業の持続可能性(経営的リターン)をめざしている。
11.
CSRは法的義務を超えるものであり、単なる社会貢献でもなく、企業が本業において自ら判断し実行する社会的に責任ある行動である。評価は後からついてくる。
12.
CSR経営戦略を確立にするには、「CSRの5W1H」の論点整理が不可欠である。自社CSRの目的、論拠、相手、内容、範囲、時期を自ら判断することである。
13.
この論点整理を統合すると、CSR経営の三次元モデル(事業の影響側面、ステークホルダー、事業の支配範囲)として表現できる。戦略的な優先順位が検討できる。
14.
なお、CSR経営においてステークホルダー重視は重要であるが、直接対話できる関係者だけに着目すると、その背後にある社会的課題が見えにくくなる危険性がある。

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