2003年11月25日

定年によるソーシャル・キャピタルの変化 -関係性再構築プロセスの検討-

  岸田 宏司

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1.
中高年男性の生活満足度が、ソーシャル・キャピタルによって受ける影響を、定年を要因に検討した。この際、定年前後の時期を、「現役期」「定年前後の変化期」「引退後の安定期」の3期に分け、それぞれの期における生活満足がどのような要因で規定されているかを明らかにした。
2.
生活満足度がソーシャル・キャピタルの指標である「人的関係数」と「団体組織加入数」に規定される様相を上記3期において比較した結果、定年間もない「変化期」の中高年は生活満足がソーシャル・キャピタルに結びつかない。これは、定年後の新たな周辺関係が、この時期に再構築されていることを示唆すると考える。
3.
生活満足とソーシャル・キャピタルの結びつきが、現役期、変化期、安定期の3期で異なる事実が明らかになったことから、具体的な「人間関係」「団体加入」においても3期ごとの変化が見られるかを確認した。その結果、「変化期」において、定年後生活の新しい人的ネットワークとなる「親類」「近所」に「頼れる人」が多い。この傾向は他の現役期、安定期には見られない傾向である。
4.
引退安定期には、「趣味型組織」における関係性が再構築されている。町内会などの地域組織のような一種義務的組織からは引退し、自由な結びつきを旨とした趣味の会などとの関係を強めている。一方、変化期は、地域組織へのコミットメントにより、定年後の関係性の再構築が試みられている。
5.
生活満足度の規定要因としてのソーシャル・キャピタルの影響が、3期において変化することを比較で検討した。現役期は、仕事における満足が生活満足を規定する最も大きな要因である。安定期では経済上の満足が、生活満足に最も影響する。一方、変化期では、経済満足は影響を持たず、人間関係満足が生活満足の重要な規定因となる。現役期の「仕事」から、変化期の「人間関係」に移行し、その後、新たな関係性構築がなされた安定期では「金銭」が生活満足に寄与する。
6.
変化期における中高年男性は、関係性の再構築を行わねばならない。この時期の関係性再構築の試みは、それまで頼らなかった「親類」「近所」の人の中に、頼れる人数を増やしていくこと、趣味等を通じた自由に参加できる組織に新たに加入し、活動すること、さらには、仕事以外の生きがいの数を増やしていくことによって行われる。一方、引退生活が安定した後は、より自由な関係性を築き、経済的な余裕を持つことが重視される。そのため、軽い仕事に就くことが生活の満足感を高める。

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