2003年06月25日

景気転換点を予測するためのインデックスの提供 -ニッセイ景気動向判断指数(NBI)の改定-

  篠原 哲

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1.
2002年1月以降回復に転じた日本経済であるが、2003年入り後は急速に停滞感を強めており、早々の景気後退局面入りも懸念されている。このように景気のサイクルが不安定化する近年の状況下では、政策決定を行なう政府や中央銀行のみならず、企業の経営者や投資家等にとっても、景気の現状および転換点を迅速かつ正確に把握することの重要性は、以前にも増して高まっていると言えるだろう。
ニッセイ基礎研究所では、迅速な景気局面判断および転換点の予測に資することを目的とした景気転換点予測インデックスである「ニッセイ景気動向判断指数(NBI)」を開発し、1998年以降毎月提供を続けている。また開発から数年が経過したこの間も、予測パフォーマンスの精度の維持に努めてきたほか、採用指標に基準改定等があった際などは、随時、再推計等をともなう軽微な改定を実施してきた。しかし最近では、NBIの採用指標の一部が公表中止になるなど、該当指標を採用系列から削除せざるを得ない事態が生じたこともあり、NBIの予測パフォーマンスにやや低下傾向が見られるようになってきた。さらにNBIのベースとなっている内閣府の景気動向先行指数にも、2001 年12 月に大規模な指標の見直しが行なわれたため、NBIにも構成指標の見直し等、予測パフォーマンスの維持・向上を目的とした本格的な改定を実施する必要性は高まっていた。 本稿においては、このような問題意識のもとで、NBIについて予測パフォーマンスの向上を最大の目的とした改定を試みることにしたものである。
2.
NBIは当研究所にて独自に作成した先行CI(ニッセイ先行CI:NCI)より導出されるため、NBIの予測パフォーマンスは、そのベースとなるNCIの先行性に左右され易い。そのため当パフォーマンスを向上させるには、NBI(NCI)の構成指標をより先行性の高い指標を中心に組み直すことが有益であると考えられる。この点を踏まえて、本稿では以下の手順に基づき改定を実施した。
(1)まずは構成指標の見直しに際し、内閣府景気先行指数の構成指標を中心に、景気に先行すると考えられる指標の先行性の検証を行なう。今回の改定においては、NBIの予測パフォーマンスの向上を最大の目的としているため、現行の内閣府の先行指標以外で景気に先行性を有すると考えられる指標も検討の対象に加える。
(2)上記①における検証結果に基づき、景気に先行すると考えられる指標のなかでも、特に相対的に先行性を有すると判断できる指標を用いて、いくつかの先行CI(NCIの候補)を作成する。
(3)作成した各NCI候補の景気に対する先行性を、景気の転換点からの先行期間の測定等により検証し、その結果、最も先行性に優れると判断できるCIをNCIとして選定する。
(4)プロビットモデルを用いて、上記③で選定したNCIを景気拡張確率に変換し、改定版NBIを導出する。
3.
導出された改定版NBIは、現行NBIのパフォーマンスを上回り、景気の転換点から平均的に3カ月ほどの先行性を有するものとなった。なお改定版においても、現行NBIが有していた(1)景気拡張確率の導出による客観的な基準の下での景気判断が可能、(2)実際の景気動向に対して先行性を有しており景気局面・転換点の事前予測に活用できる、(3)操作・更新が簡易、という固有の特色は維持されており、当改定版NBIは景気判断・予測の実用に十分に耐えられるものであると言えよう。

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