2000年07月25日

企業の環境格付(試論1) -異業種間の環境経営力に格付けをする-

  川村 雅彦

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1.
21世紀は企業の「環境経営力」が厳しく問われ、企業経営者が「環境」を重要な経営資源とみなす時代となる。もはや環境問題に無縁の業種は存在しない。このような新しい価値観の誕生と厳しい競争の中で、企業が持続的に発展繁栄していくためには、今後、環境問題を経営戦略のなかでとらえ、本業において積極的に環境対策に取り組んでいくことが必要不可欠である。
2.
1999年は「エコファンド元年」とも言うべき画期的な年であった。金融と環境が合体した投資信託商品を通じて環境問題に積極的に取り組んでいる企業に投資ないし支援するという明確な姿勢が形成されつつある。さらに、最近では企業を取り巻く様々なステーク・ホールダー(利害関係者)が環境面からの企業評価を求め始めている。そのためには、異業種間の企業比較も可能な客観的かつ定量的な共通の評価基準が不可欠である。これが企業の環境経営力を評価する「環境格付け」となる。結果として、企業の収益性や競争力も環境経営力に左右される部分も増えてくる。それゆえ、共通の尺度で企業を評価する環境格付けの有用性は拡大するものと考えられる。
3.
そこで、本稿では、異業種間の企業評価が可能な環境格付けの手法を提示し、実際に個別企業の格付けを試みた。
4.
環境面に着目した企業の評価とは、環境面における企業活動や組織的な取り組みの実態と、その結果として発生する環境負荷とそれから導かれる成長性やリスクなどを評価することである。これを企業の「環境パフォーマンス」評価と呼ぶ。
5.
環境パフォーマンスには「環境マネジメントパフォーマンス」と「環境負荷パフォーマンス」の両面があり、それぞれ3つの評価軸から構成され合計6つの評価軸となる。
「環境マネジメントパフォーマンス(EMP)」
・組織体制:経営トップのコミットと効率的な環境マネジメントシステムがあるか?
・環境計画:業種特性に合致した適切な環境負荷の削減計画となっているか?
・情報開示:正確かつ的確な情報をステークホールダーに提供しているか?
「環境負荷パフォーマンス(ELP)」
・環境負荷:業種特性に応じた環境負荷は低減されているか?
・環境リスク:業種特性に基づく環境リスクの回避に努めているか?
・環境コスト:環境費用と環境投資およびその効果を把握しているか?
6.
企業の環境パフォーマンスを評価し格付けする方法には様々なもの考えられるが、実際に、欧米の評価機関は独自の格付け方法を開発しており、「環境格付けの時代」を迎えている。しかしながら、異業種の企業をある統一基準により評価することは、それほど容易なことではない。なぜなら、主力商品およびその環境負荷の違いから重視すべき環境問題が全く異なっているためである。
7.
企業の環境パフォーマンスを評価する場合、現状では環境情報の量と質の不足が最大の課題であるが、評価手法上の課題もいくつかある。
・ 環境マネジメントパフォーマンスと環境負荷パフォーマンスの評価バランス
・ 環境パフォーマンスの6評価軸の優先順位
・ 環境問題や環境負荷の重要度・リスク度の評価
・ 生産・物流時の環境負荷と使用・消費時の環境負荷の評価バランス
・ 異業種間の企業評価・格付けのための統一基準の必要性
8.
このような手法上の課題が概念的に解決できれば、異業種間の企業評価や格付けが可能となる。そこで、いくつかの新しい考え方を取り入れた方法を提示する。
ステップ1:CRA(コンパラティブ・リスクアセス)により環境問題に優先順位をつける
→ 環境負荷の相対的な重要度・リスク度の決定
ステップ2:業種別の「環境負荷指数」を計算する
→ 異業種間の環境負荷(リスク度)の相対的な重要度の決定
ステップ3:業種別の環境負荷指数を基に「業種類型」に分類する
→ 異業種間の環境パフォーマンスの評価ウエイトの決定
ステップ4:6評価軸の評価項目を決める
→ 「環境パフォーマンス評価表」の完成
ステップ5:個別企業に6評価軸の評点をつける
→「グリーンポイント」の計算
ステップ6:グリーンポイントによりEMPとELPの格付けを行う
ステップ7:EMPとELPの格付けにより総合格付けを行う
9.
格付けは10段階とし、その記号はABCDを用いて次のようにした。
A++、A+、A、B++、B+、B、C+、C、D+、D
10.
提示した格付け手法に基づいて、実際に個別企業の環境報告書のデータのみをもとに格付けを試みた。まだ粗削りであるため、今後さらに検討を重ねていきたい。なお、「環境格付け」とともに「環境プロファイル」を作成することで、企業の環境パフォーマンスをより明確にすることができる。

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