1999年03月25日

地球環境時代の企業経営とは -環境リスクにどう対処し、環境戦略をどう構築するか-

  川村 雅彦

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 20世紀は環境と対峙したが、21世紀は環境調和の世紀である。本稿は、地球環境時代を迎えた現在、わが国の企業が環境問題をどのように認識し、どのように行動しようとしているのかを業種別に探ろうとしたものである。今後の企業活動の環境保全に向けた貢献への期待感は強い。しかし、一方で、個々の企業にとっては、環境規制の強化に伴い環境リスクにどう対処し環境戦略をどう構築するかが、その生き残りにかかわる重要課題の一つとなってきた。
現在、バブル崩壊後の長期不況のなかで業績不振にあえぐ日本の企業にとって、最優先の課題は体質改善と収益性確保である。しかし、それを実現したうえで、なお克服すべき課題が待ち受けている。企業の高い倫理観と、それに裏付けられた社会と融和する経営と環境経営である。環境経営への変革は、短期的には制約条件であるが、環境リスクを未然に防ぎ、次の時代に向けた新たな競争条件となるのである。
1.
企業が環境戦略を構築するに当たっては、環境問題に対するこれまでの基本認識を問い直す必要がある。一部の先進企業を除いて、従来型の環境意識に安住している企業が多い。そこで以下の仮説を提示する。本稿においてすべての仮説が検証できた訳ではないが、問題提起としたい。
【企業の環境経営に関する仮説】
仮説1:企業は環境に負荷を与えている。しかし、企業によってこそ環境負荷を軽減できる。
仮説2:環境問題は企業にとって制約条件である。しかし、新たな競争条件となる。
仮説3:消費者は環境にとって問題ある存在である。しかし、企業を変える最大の存在である。
仮説4:環境対策は企業にコスト負担を強いる。しかし、最終的には必ず採算が取れる。
仮説5:リサイクルは促進すべきである。しかし、「再利用」と「長寿命」こそ重要である。
仮説6:企業イメージは大事である。しかし、“上げるもの”ではなく、“上がるもの”である。
仮説7:汚染したら浄化するのが当然である。しかし、「汚染者負担原則」は守られていない。
仮説8:「地球にやさしい」企業でなければならない。しかし、情緒的な宣伝は逆効果である。
仮説9:環境リスクは製造業の問題である。しかし、製造業を支えているのは非製造業である。
仮説10:法規制強化で環境リスクは増す。しかし、それ以外のところに本当のリスクがある。
仮説11:ネガティブ情報の開示は危険である。しかし、負荷の削減を自らに課すことができる。
仮説12:環境コストは特別なものである。しかし、その把握がコスト削減を可能とする。
仮説13:環境保全は企業の社会的責任である。しかし、それを超えたところに環境戦略がある。
2.
わが国の企業の環境問題に対する基本認識は、やや受け身ではあるが、その取り組みは必須条件となると考えている。一部の企業はコスト増であっても競争力を増し、またビジネスチャンスと考えている。業種別には、エネルギー供給業や製造業の意識が高く、次いで運輸業、建設業、流通業となるが、金融業では将来的な必須条件としている。
3.
世界的にISO14001の“認証取得競争”が進んでいるが、認証取得とは環境ISOに準拠した仕組みが社内に在ることを内外に表明することに尽きる。環境負荷の低いことやエネルギー消費の少ないことを証明するのではない。それゆえ認証取得は環境対策のスタートラインであり、ゴールではない。業種別には製造業中心ではあるが、最近では非製造業の取得が増加している。
4.
企業の環境リスクは現代の企業リスクのひとつであり、特別なものではない。企業の環境リスクには(1)現行法規制によるリスク、(2)法規制強化によるリスク、(3)法規制によらないリスクがある。特に法規制によらないリスクは今後重要になり、財務上の損害リスクと社会的制裁・信用力喪失リスクがある。実際に欧米での事例が多く、学ぶべき点が多い。
5.
一部の先進的企業は環境問題を自らの企業経営の中に取り組む形で、新たな競争条件としている。地球環境時代の企業の環境対応には、3段階があり、各企業は現在どの段階にあるのだろうか。
第1段階:環境問題の重要性は認識するが、事態を見守り、“基本方針”の表明にとどめる
第2段階:環境問題は不可避と認識し、他社の動向をみながら環境行動を取り始める
第3段階:環境問題は経営問題であり、長期的視点から本業において対応に着手する
6.
環境経営とは、環境リスクを把握し低減に努めつつ、環境問題を新たな企業の競争条件として認識した経営を行うことである。

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