1998年01月25日

東京圏における住宅需要の将来展望 -世帯構造の変化に基づく2010年の潜在的住宅需要の推計-

川村 雅彦

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1.
長期的な住宅の潜在的需要量(将来の必要住宅ストック量)の水準は、世帯数の変化という構造的要因によって決定される。世帯数の変化は人口構造の変化と各世代の世帯形成行動によって規定される。本稿は、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の1都3県)について、これまでの世帯タイプ別・世帯主年齢別の世帯数の変化およびそれに伴う住宅タイプ別の構成比率の変化を把握した上で、2010年の住宅タイプ別の潜在的住宅要素の推計を試みたものである。推計手法としては、トレンド分析とシナリオ分析を併用した。
2.
わが国の戦後の出生数を年代ごとにみると、団塊一世(1940年代後半生まれ)および団塊二世(1970年代前半に生まれた団塊一世の子供)が抜きんでて多い。これがわが国の人口構造や世帯構造の骨格を形成しており、結果として今後の急速な高齢化をもたらすことになる。
3.
東京圏の世帯数は戦後一貫して増加してきたが、厚生省の推計によれば、今後も継続して増加することが予想され、1995年には1,232万世帯であったものが、2010年には286万世帯増加して1,518万世帯となる。この世帯数増加のうち「ファミリー世帯」が4割を占めるのが、その大半はファミリー形成期を迎える団塊二世によるものである。次いで増加数が多いのは「高齢夫婦世帯」と「高齢単独世帯」である。逆に「3世代同居世帯」では減少する。
4.
住宅タイプ別の構成比率は世帯タイプによって大きく異なる。1995年における住宅タイプ別の構成比率を世帯主別にみると、加齢とともに持家率が上昇し、40歳前後で50%以上となり、55歳前後で70%を超す。その後は漸増しおおむね75%程度に収束する。
5.
住宅需要(世帯数)の将来推計手法としては、まず世帯タイプ別の「世帯主年齢×住宅タイプマトリックス」をトレンド分析により推計し、さらに住宅需要に影響を及ぼすと考えられる主要世代の居住選択の意志を反映させるために、実現性のあるシナリオを複数設定して世帯タイプ別・世帯主年齢別・住宅タイプ別の世帯数を推計する方法を用いた。また、各シナリオの実現可能性の違いによるウェイト付けを行い、それらを重ね合わせることにより代表的な推計値を求めた。1995年から2010年までの15年間の潜在的住宅需要の増加量について、推計結果を示すと次のとおりである。
・持家系が増加分の63%を占める(持家戸建122万世帯増、持家マンション58万世帯増)
・借家系では民営借家マンションの増加(76万世帯増)が中心となる
・公的借家も30万世帯と比較的増加が大きい
6.
団塊二世の賃貸志向と高齢者や団塊一世の加齢対応の動向によっては、今後の住宅需要は大きく変わる可能性がある。

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