1994年02月01日

わが国の「市民活動」を支えるもの -多元構造社会の担い手として「市民活動」を考える-

  佐藤 光邦

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<要旨>

1.近年、各方面からボランティア活動に対する関心が高まってきているが、その背最として高齢化・国際化・地球環境問題など、現在わが国社会が直面している課題への対応について、行政主導による社会問題の一元的解決という「一元構造」を特徴とする、これまでのわが国社会システムの限界、及びこれに代わるべき「多元構造社会」に向けた変革の必要性が認識されてきていることが挙げられる。

2.ボランティア活動など市民活動の実態については、統計データや調査研究実績が乏しく、明らかでない部分が多いが、各方面からの関心が高まってきているの今日の情勢下では、そうした実態の不透明性が理解や支援を阻害し、その健全な発展を妨げる要因となるものと考えられる。

3.当研究所では、93.10わが国の様々な分野で活動する市民活動団体約1800団体を対象とするアンケー卜調査を実施した。その結果、わが国の市民活動に関する次のような特徴が明らかになった。

 1)活動分野により、財政支援体制に次のような特徴を有する。
 (1)国際協力分野の団体(NGO)は、他分野に比べ予算規模が比較約大きいが、その財政は個人会員組織による市民の会費や寄付に対する依存度が高い。
 (2)社会福祉分野の団体(社会福祉協議会を除く)は、自己調達と行政の補助金に対する依存度が高く、市民や企業の支援に対する依存が他分野に比べて小さい。
 (3)青少年育成、環境保全分野の団代は市民に対する依存度が高いが、予算規模がさほど大きくないこともあり、会員制度組織率は国際協力分野ほど高くない。
 2)今後の財政支援増に向けた期待については、国際協力分野の団体だけは市民に期待する意向が強くみられるものの、他分野の団体は行政に対する期待が強く市民に対しては理解・参加を求めるにとどまる。
 3)ボランティア活動に対する社会的評価制度の是非については、メリッ卜や懸念事項を表明する多くの付帯意見がつけられたものの、全般的に賛成意見が高い割合を占め、活動者の強い期待が示される結果となった。

4.行政支援に強い期待が示された今回の調査結果は、市民に財政支援のベースを期待することが困難であったこれまでの状況の反映と理解され、わが国社会がこれまでのような一元構造社会から多元構造社会に移行していくためには、市民のより一層の理解・賛同を得ていく一歩進んだ体制づくりが必要であることを示している。全国民的規模による問題提起・議論の高まりが期待される。

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