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厚生年金の加入制限が段階的に廃止へ。適用徹底には連携強化が課題。~年金改革ウォッチ 2025年10月号

保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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1 ―― 先月までの動き
○社会保障審議会 年金数理部会
9月4日(第106回) 少子化及び外国人労働者の動向と年金財政(オンラインセミナー形式)
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198131_00054.html (資料)
○社会保障審議会 年金事業管理部会
9月19日(第80回) 日本年金機構の令和6年度業務実績の評価、その他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/kanribukai-siryo80_00003.html (資料)
2 ―― ポイント解説:厚生年金の適用拡大と適用徹底の課題
厚生年金の加入(適用)対象となるか否かは、個人の就労状況(労働時間等)に加えて職場(事業所)の形態等も影響する。正社員*1の場合、法人の事業所は業種や規模に関係なく強制加入の対象となるが、個人事業所は法定業種かつ常時5人以上を使用する場合に強制加入の対象となる。パート(短時間)労働者の場合は、上記に加えて、企業規模(会社全体の正社員数)など固有の要件(制限)も存在する。

なお、パート労働者の賃金要件は、法改正では公布後3年以内の廃止が規定されたが、来年4月には全都道府県の最低賃金が時間要件の下限(週20時間)で働いた場合に賃金要件(月8.8万円)を超える水準(1016円超)に上がる見込みになった。そのため、この要件は来年度に廃止される可能性がある*2。
*1 厳密には、週所定労働時間および月所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上の常時使用される者(正社員以外も含む)。
*2 なお、適用拡大に伴う働き控えを抑える措置(3年間の保険料軽減)の施行は、2026年10月となっている。
制度改正で対象が拡大しても、実際に加入できなければ厚生年金を受け取れない。厚生年金の加入は原則として事業主が自主的に届け出るため、基準を満たしていても、適用が漏れる事業所や従業員が発生しうる。これを減らす取り組みが、日本年金機構における厚生年金の適用徹底である。

今後の適用拡大に向けても、適用徹底の取組みが期待される。パート労働者への適用拡大では、これまでも施行の前年度から対象事業所への事前訪問や従業員への説明の依頼などが行われ、施行後にも事業所調査が行われた。今後の適用拡大でも、同様の取組が望まれる。
個人事業所への適用拡大は、2022年に士業への拡大が行われているものの、今後は全業種への拡大となるため、適用徹底の取組みがより重要となろう。当面は対象が新設事業所に限定されたことを踏まえれば、開業届を提出した際の制度周知や開業情報の連携を手始めとした、国税庁との連携強化を期待したい。さらには、現在は法人事業所に限定されている源泉徴収情報の照合対象を個人事業所にも拡大するなどの連携強化も期待される*3。
*3 本稿の対象範囲を超えるが、適用拡大にあたっては企業の保険料負担も課題となろう。企業努力などでまかなえない部分は価格上昇を通じて消費者の負担となるが、従来の価格が社会保険に加入できない非正規労働者による安価な人件費に依存していた点を考慮し、賃上げのコストと同様に社会全体で負担するという認識が必要となろう。
(2025年10月14日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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