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2025年10月06日

グローバル株式市場動向(2025年9月)-米国の利下げ再開により上昇継続

金融研究部 准主任研究員・サステナビリティ投資推進室兼任 原田 哲志

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1――米国の利下げ再開により上昇が継続

2025年9月、世界の株式市場は上昇した。米国が利下げを再開、また今後利下げを前倒しで進めるとの観測が市場を押し上げた。代表的な世界株指数(含む新興国)であるMSCI All Country World Index (MSCI ACWI)の騰落率1は2025年9月+3.5%、過去1年(2024年10月-2025年9月)では+15.6%となった(図表1)。

先進国と新興国を比べると、新興国が先進国を上回った。先進国(MSCI World Index)が+3.1%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+7.0%となった(図表2)。
図表1 世界株指数の推移/図表2 先進国・新興国指数の推移
グロース・バリューでは、グロース指数(MSCI ACWI Growth Index)が+4.8%、バリュー指数(MSCI ACWI Value Index)が+2.0%とグロース優位となった(図表3)。企業規模別では、大型株(MSCI ACWI Large Cap Index)が+3.9%、中型株(MSCI ACWI Mid Cap Index)が+1.1%、小型株(MSCI ACWI Small Cap Index)が+1.8%と大型株の騰落率が高かった(図表4)。
図表3 グロース・バリュー指数の推移/図表4 企業規模別指数の推移
 
1 以下、特に断りのない限り騰落率は米ドル建、配当を除いた指数値の変化率を示す。

2――国・業種別の動向

2――国・業種別の動向

国別の動向では上昇した国が多かった(図表5)。主要国について見ると、米国(+3.6%)、中国(+9.5%)、ドイツ(▲0.4%)、日本(+1.7%)となった。騰落率が高かった国・地域はパキスタン(+13.3%)、オランダ(+13.2%)、ペルー(+12.8%)だった。一方で、アルゼンチン(▲20.4%)、フィリピン(▲5.4%)、デンマーク(▲3.0%)の騰落率が低かった。

米国はFRBの利下げ期待が高まったことやインフレ鈍化の兆しを背景に上昇した。AI関連や大手テック株への投資熱の強まりや企業業績の改善も追い風となった2

日本は米国の利下げ観測による世界的な金利低下期待と円安進行が輸出企業の収益改善期待を高めたことなどから上昇した。また、石破首相が辞任を表明したことで、リーダー交代による追加的な景気刺激策や政策転換が期待されている。

中国は政策期待とAI関連株の人気を背景に上昇した。10月の中国共産党の重要会議である「第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)」を前に景気・市場支援策への期待が高まった。

パキスタンはIMF支援継続や財政改革などによる経済の安定化期待を背景に上昇した。また、パキスタンとサウジアラビア政府は戦略的相互防衛協定に署名したと発表した3。これにより安全保障の強化から紛争による地政学リスクの低下が期待されたことも上昇要因となった。

アルゼンチンはブエノスアイレス州選挙でミレイ大統領派が敗北し改革継続への懸念が強まったほか、中央銀行のドル防衛による外貨準備減少が通貨危機不安を招いたことから下落した4
図表5 各国の株式市場の騰落率
業種別に見ると、自動車・自動車部品(+16.1%)、半導体・半導体製造装置(+10.5%)、テクノロジー・ハードウェアおよび機器(+9.2%)の騰落率が高かった。一方で、不動産(▲4.6%)、家庭用品・パーソナル用品(▲4.2%)、消費者サービス(▲3.0%)の騰落率が低かった(図表6)。
図表6 グローバル株式市場の業種別騰落率
 
2 Reuters, “Relentless US stocks rally could teeter on inflation, earnings, valuation risks”, September 25, 2025
3 日本経済新聞、「サウジ・パキスタン、相互防衛協定を締結」、2025年9月18日
4 日本経済新聞、「アルゼンチン、地方選で大統領派が敗北 改革に黄信号でトリプル安」、2025年9月9日

3――世界の主要企業の株価動向

3――世界の主要企業の株価動向

世界の主要な企業の株価を見ると上昇した企業が多かった(図表7)。時価総額上位30社までの企業では、テスラ(+33.2%)、アリババグループ・ホールディングス(+32.4%)、ASMLホールディングス(+30.7%)のリターンが高かった。一方で、マスターカード(▲4.4%)、アマゾン・ドット・コム(▲4.1%)、ビザ(▲3.0%)のリターンが低かった。

テスラは第三四半期の出荷見通し上方修正や米国EV税控除終了前の需要増期待といった要因から上昇した。また同社のCEOであるイーロン・マスク氏が約10億ドルの自社株を購入したことも同社の成長への期待を高めた5

マスターカードはウォルマートなど小売業者が自前のステーブルコイン発行を検討していることが報道されたことで、カード決済ネットワークを迂回する動きが広がることで決済手数料モデルの収益低下が懸念され下落した。
図表7 世界の主要企業の株価動向
 
5 Bloomberg、「テスラのマスクCEO、10億ドル相当の自社株を購入-株価急伸」、2025年9月15日

4――今後の見通しと注目されるテーマ

4――今後の見通しと注目されるテーマ

世界の株式市場は米国の利下げ期待などから上昇した。こうした中、9月23日に経済協力開発機構 (OECD)は世界経済見通しを公表した6。OECDは2025年の世界経済の成長率を3.2%と予測、6月時点の予測から0.3%上方修正した。OECDは米国の追加関税に備えた企業による生産や貿易の前倒しやAI関連への活発な投資などにより2025年上期の経済活動が押し上げられたと指摘した。また、労働市場の緩和や経済成長の鈍化に伴い、G20加盟国のインフレ率は今後低下すると予測した。

ただし、一部の国でインフレ率低下のペースが鈍化していることから、インフレ圧力が再度高まるリスクについても指摘した。こうした中、経済指標やFRBの利下げについての動向が株式市場を左右する展開となっている。世界の経済・株式市場の動向に引き続き注目したい。
 
6 Organisation for Economic Co-operation and Development, ”Global economic outlook weakens as policy uncertainty weighs on demand”, 23 September 2025

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年10月06日「基礎研レター」)

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金融研究部   准主任研究員・サステナビリティ投資推進室兼任

原田 哲志 (はらだ さとし)

研究・専門分野
資産運用、人的資本、老後資金

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
         大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
    2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)

    【加入団体等】
     ・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
     ・修士(工学)

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